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クライアントと本音で語り合う環境が必要
「ustwo(アストゥー)は『デジタルプロダクトスタジオ』。エージェンシーではありません」──共同オーナーのジュリアン・エールハルト氏は強調する。TwitterのUIシステムを開発したり、自動車のジャガーとアップルウオッチ用のアプリを作成したり、スピーカーのSONOSのブランディングや音楽再生のためのソフトウェアのデザインを手がけたりと仕事の幅は広い。
ほかにもグーグルやH&M、JPモルガンなどクライアントは多岐にわたる。ブランディングや販売ではなく、「プロダクト」にこだわるのは、良いものをつくることこそがクライアントの業績やブランド価値向上つながると強く信じているからだ。
ustwoは11年前にロンドンで創業した。現在はマルメ(スウェーデン)、ニューヨーク、シドニーを含む4拠点を構え、従業員は30カ国から約330人に及ぶ。日本人も在籍している。
クライアントのことは「パートナー」と呼ぶ。そこに同社の思想が見てとれる。
「クライアントとベンダーが向き合う関係では、本音で語り合うのは難しい。私は以前、コンサルタントとしてそれを経験しました。我々はいま、一緒に仕事をするパートナーを見つけ、ひとつのチームになって密接なコミュニケーションを取るようにしています。消費者にとって利用価値のあるプロダクトをつくるためには、こうした関係が欠かせないのです」(エールハルト氏)。パートナーと毎日のようにコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める「アジャイル型」を志向している。
「広告を打つよりも、価値のあるプロダクトを」
コンサルティングファームが制作会社を買収し、WPPやオムニコム傘下の大手広告会社と競合する中にあって、マーケティングの企画・コンサルティングに未来はないと考えている。「Webだけでは時代に取り残される。VR、AR、人工知能……あらゆる手法を視野に入れる」「変わらなければ生き残れない」といった言葉からは、現状にとどまることへの強い危機感がにじむ。
「例えばTESLAは広告をしません。消費者がマーケティングしてくれます。一方、ネット広告はブロックされ、テレビはリアルタイムで見るものではなくなっている。いかにうまく広告を打つかを考えるよりも、価値のあるプロダクトを生み出すべきなのです」(同)。
ustwoはプロダクト開発のほかに、従来型のコンサルティングやリサーチなどのサービス提供やベンチャー投資と育成支援(アクセラレーター)も手がけている。収益源を多様化させることで、環境の急速な変化に対応していく考えだ。
テーマは「いかに既存の枠組みを超え優秀なチームと手を組むか」。
社外からリソースを調達し、パートナーと上手く組むことで、広告主企業も広告制作会社も勝てる時代が到来。
広告の枠組みを超え、新しい形の事業やプロジェクトを展開する、米国先進企業に学ぶ人気企画。
◆先着順・6月30日(金)〆切◆
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