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視察研修に帯同したのは、ニューヨークを拠点に広告・マーケティング領域のコンサルティングを行う榮枝洋文氏(デジタルインテリジェンス)。日本で広告・メディアビジネスに携わる参加者向けに、米国の潮流と視察のポイントについて解説した(9月26日、米ニューヨークにて)。
取引の透明性確保は双方の合意があってこそ
WFA(世界広告主連盟)が2014年に、主要国のメディア取引の透明性について色分けした地図を発表しました。対象の20カ国のうち、日本はどれくらいの位置だと思いますか。実は19位。中国に次いで不透明極まりない国とされています。ちなみに、最も透明性が高いとされているのはフランスです。
メディア取引の透明性についての議論は世界で白熱しています。エージェンシーがメディアの枠をいくらで仕入れて、それをクライアントにいくらで提供しているのか。エージェンシーが枠をまとめて先買い付けをして利益を乗せている場合もありますし、メディアからのリベートが発生している場合もあり話が複雑になっています。今年になり米国広告主協会(ANA)は具体的なレポートを公表して追及しています。
日本でも、電通によるネット広告の「不適切取引」の発覚がありました。電通は自ら調査し、襟を正すと発表しました。日本ではあまり知られていないと思いますが、ANAは電通のこうした対応を評価しています。アドバタイジング・エージ誌でも報道されました。そもそも、広告主と広告業はお互い納得した上で取引条件を決めた上でお付き合いしていくことが必要。その片方を悪者にするだけで片付けられる問題ではないということは理解しておくべきです。
マーケティング業界のビジネス構造が変革している
これまでは、メーカーはモノを売って終わり、または多少のサービスをつける程度でした。これからは一生お付き合いしてサービスを提供していくようなビジネスモデルにシフトしていくでしょう。例えば、トヨタ自動車が車を売るだけでなく、移動に伴うあらゆるサービスを提供するというイメージです。Uber(ウーバー)のようなサービスを始めるかもしれないし、自動運転や輸送手段のサービスも視野に入るでしょう。
こうした考え方は、Platform as a Service(PaaS)、Software as a Service(SaaS)などと言われてその総称としてXaaS(ザース)と略されています。マーケティング業界のビジネスモデルも同じく変化していきます。例えば電通が電通デジタルを立ち上げたことも、こうした背景から説明できるのではないでしょうか。
これは事業への投資とその回収方法についても新しい考え方を示しています。日本で根強い考えは、投資をしてできた商品やサービスを販売し、利益で回収していくというモデルでした。米国でのスタートアップ事業は、投資したプラットフォーム事業の成長の兆しをもとに企業価値を引き上げ、追加注入の資本を事業に再投資するという傾向がマーケターやエージェンシーのまわりでもひとつの大きなうねりとして存在します。
テーマは「いかに既存の枠組みを超え優秀なチームと手を組むか」。
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