日本企業が検討すべきマーケティング戦略「プランB」 — トランプ新大統領、広報コミュニケーションへの影響⑩(結城喜宣氏)

1月21日(日本時間)、ドナルド・トランプ氏が第45代米国大統領に就任した。就任前から政策の方向性のみならず、メディアとの向き合い方、自らの情報発信にも注目を集めてきたトランプ氏の大統領就任を広報・情報戦略、企業のリスクマネジメント、メディアの専門家はどう見ているのか?日本企業の広報・コミュニケーション戦略への影響という観点から予測する。

結城 喜宣 氏
Ys and Partners/Ys and Partners Japan 代表取締役社長 エクゼクティブクリエイティブディレクター

JWT東京でグローバルブランドのマーケティングコミュニケーションを学び、1999年に家族と共に渡米。カリフォルニア大学アーバイン校でデジタルデザインを学んだ後、2002年に「日本のブランドを米国で有名にする」をミッションに掲げ、広告代理店Ys and Partnersを妻の結城彩子と共に起業。2005年に横浜・元町にYs and Partners Japanを起業。2014年、東京に3つ目のオフィスをもち、日米を繋いでビジネスを行なっている。これまで50社以上の大手企業を支援し、多数の講演や広告賞の実績をもつ。

 

アメリカ本土でのマーケティング戦略を見直す必要はあるか

政治の専門家でもない私がトランプ大統領について語ることはできません。しかしカリフォルニアに20年近く住む住民として、またアメリカと日本の両国を繋いでマーケティングやアドバタイジングのビジネスをしている者として何かを語ることはできるかもしれない。そう思い直して、大統領就任式の夜に原稿を書くことにしました。

はっきり言うと、私はトランプ大統領に期待せざるを得ない立場にいると考えています。好きとか嫌いとかの感情を抜きにした話です。米国に渡り、真剣勝負をしている同士たちは、少なからずみな同じ気持ちでいると思います。つまりどういう政策が取られようと、私たちはそれを変化の機会と捉え、前向きに対処していくしかない。あれこれ悪い予想をしていてもはじまらないし、ビジネスを潰すわけにはいかないからです。

最近、日本のクライアントから共通する質問を多く受けるようになりました。なかには日本でいても立ってもいられず、カリフォルニアに訪ねてこられる方もいらっしゃるほどです。その質問とは、「トランプ大統領になってアメリカ国内のマーケティング戦略を見直す必要があるか」ということです。

しかし私たちが答を持っているわけではありません。まだ新しい政権は始まったばかりで、具体的な政策が見えてきていないからです。現在のこの段階でとお断りした上で、マーケティング戦略において「プランB」を検討する必要がありそうなことを、3つの点からお話しすることにしたいと思います。

次ページ 「アメリカ国内に工場を持つことを少なくとも一度は検討せざるを得ない状況」へ続く

次のページ
1 2 3 4
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ