自身のキャリアを築く中で、良き師匠、指導者に巡り会うというのは成功に欠かせない重要な要素です。オリンピックにしろノーベル賞にしろ、成功者のインタビューでは必ずといっていいほど師に対する御礼をまず挙げる人がほとんどではないでしょうか?
英語文化でも同じような意味をもつ「メンター」 (Mentor) という言葉があります。キャリアが浅い頃には積極的にメンターを探し、経験を積むにしたがって今度は逆に若い人をメンターする、これも社会の仕組みの大事な役割です。
僕は社会人としてのキャリアのほとんどを海外(アメリカ)で過ごして来ました。慣れない英語と親しみのない文化の中で、当初は共感をもって悩みを相談できる人はほとんどいませんでした。アメリカでの生活も5年目が過ぎた頃、社会人としてもがき苦しんでいる最中、幸運にも今でも師と仰ぐメンターと巡り会うことができました。当時AKQAでチーフ・クリエイティブオフィサーとして活躍されていたレイ・イナモトさんです。レイ・イナモトさんは世界を舞台に大活躍されている広告業界のイチローです。まだ小さかったクリエイティブ・エージェンシーのAKQAをグローバルな会社に育て上げ、30代にしてクリエイティブのトップ兼副社長として活躍されました。
そんなレイさんが昨年AKQAを退職し、自らの会社Inamoto & Co.を立ち上げました。広告業界のイチローはどんなビジョンを持って新しいステージを走っているのか。それを探るべく、ニューヨーク・ブルックリンのまだ改装工事の匂いが残るオフィスにイナモト・レイさんを訪れました。