日本人なら多くの人が大好きで、卵かけゴハンなんかはTKGという略称親しまれている昨今。
僕も生卵が大好きで、牛丼屋では必ず生卵トッピングを追加していた。
そんな僕がブラジルにいた時、南米最大都市サンパウロには、日本でもおなじみのすき家が展開し始めていた。旅立ってからの久しぶりの牛丼!もう気分は高揚してしまい、すごい勢いで牛丼と生卵を注文した。
すると店員さんから、「生卵は取り扱っていないんです……」との返答が…!そんな馬鹿な!
牛丼に生卵は僕の中では王道だったために想定外の返答に動揺するが、事情を聞くとブラジルでは飲食店で生卵を出すこと自体が禁止されているとのこと。サルモネラ菌の食中毒の危険性があるために仕方ないとのことでした。
……なるほど。品質管理か。
確かにブラジルはまだまだ品質管理面で日本には及ばないのかもしれないとか、一人妄想して勝手に腹落ちする。
その時は新興国ブラジルだったので、逆に言えばある種、自分自身の先入観で仕方ないかと思っていた部分があった。品質管理を優先するのはもう少し先なのかなと。
ところが、この前僕がドイツにいた時であった。
泊めてもらっているデンマーク人のルームシェアメイト達にお世話になった御礼として、スキヤキを振る舞うことにした。ドイツのデュッセルドルフというベルギー寄りの都市にはライン工業地帯の名残で、今でも多くの日系企業の駐在拠点となっているため、海外では滅多に手に入れることができない薄切り肉(スキヤキ・しゃぶしゃぶ用)を肉屋で手に入れることができるじゃないですか!
もちろん、安くはないですが、お肉を購入し、お世話になった彼らにご奉仕。
クックパッドでレシピを僕の脳味噌にインストールをして、スキヤキを作り始めてほぼ完了。
さぁ、いざ食べようというタイミングで事件は起こりました。
その場にいた全員が、生卵を拒絶したのです。
ドイツ人、デンマーク人、アイルランド人、アメリカ人……全員が生卵にNOを突きつけたのです。
まさかそんなリアクションが来るとは思っていなかったので一瞬呆然としましたが、彼らの話を聞くと、ブラジルと全く一緒でした。生卵はサルモネラ菌による食中毒の可能性があるので、決して生では食べないと。卵を生で食べるのは映画のロッキーぐらいだと。
新興国であるブラジルなら品質管理よりもコスト優先で仕方ないと思っていた部分が僕にはあったのですが、他の先進諸国でも全く同じだったのです。チェックしてみるとスーパーで市販されている生卵の賞味期限は1カ月後!これは・・・日本なら腐っているんじゃないかと……。
結局、僕らは相談の末10分弱ゆでてから食べるということになり、ほぼ一歩手前のゆで卵を無理矢理溶かして、スキヤキを食べたのでした(ちなみに生卵無しでもスキヤキはウケ良くて翌日にレシピを聞かれました)。
その後、インターネットで調べてみると、実は日本以外の国では生卵を食する文化は滅多になく、原因としてはやはりサルモネラ菌による食中毒が挙げられていました。
僕はこの時、初めて日本の生卵の品質管理が他国に比べると(ポジティブに)異常なのだと気づきました。他国も卵を殺菌処理すればいいので実現可能なはずなのですが、特に生卵文化があるわけでもないので、そこまで需要も無いですし、コストが無駄に上がるだけなのでしょう。しかし、生卵文化が根付いた僕ら日本人には、卵かけゴハンをはじめとして大問題ですよね。
旅をしていると、時折こういったカルチャーショック(?)があるから面白い。スペインではパスタはアルデンテなど誰も気にせずゆで過ぎるのに、パエリアなどの米料理は何故か米の芯を少し残すという僕らからすると不思議な状況だったりと。食文化の違いによるカルチャーショックも、いつしか当たり前のことのようになっていくのかもしれませんね。
以上、日本の皆さんも海外で生卵を食べるときには十二分に注意してくださいね!
今回は旅コラムっぽくなりましたが、日本にいては中々気づくことのできないことをお伝えしたかったのでした。
※なお、生卵需要に応えて、海外の一部スーパーではBIO卵なる殺菌処理の生卵を販売しているようです。
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