【前回】「コトバがない広告って、つまんなくないですか?福部明浩×小杉幸一×尾上永晃×福里真一【前編】」はこちら
コトバがないと検索できない
福里:小杉さんはアートディレクターという立場ですが、広告のコトバをどうデザインしていますか。
小杉:僕はデザイナーですが、広告を明快なコトバで考えています。コトバにしてクライアントに伝えないと、どこかでペテン師的な印象を与えてしまうのではないかと怖いからです。コピーをデザインした具体的な仕事については、レディー・ガガさんを起用した資生堂の広告を紹介したいと思います。
僕らのチームのコピーライターは仲畑貴志さんでした。まず、仲畑さんからコピー案を提出いただいたときに、A3用紙にコピーをプリントし、その言葉の箇所だけをカットされていてびっくりしました。
福里:仲畑さんはご自身の就職活動のときに、世に出ているさまざまな新聞広告のコピーの箇所の上に、自分で書いたコピーを貼りつけて提出されたそうです。いかに実際に使われたコピーより自分のコピーの方がいいかをアピールするために。その感覚と近いのかもしれませんね。
小杉:提案いただいたコピーが「あなたはあなたでいて。それが、あなたの美しさだから。」でした。このコピーをどうデザインしていくのかを考えたときに、レディー・ガガさんの撮影ができない中、自然体の過去のガガさんの写真を起用したいと思い、事務所に意思表示をしました。ところが上がってきた写真は、すべてガチッと決まっているガガさんの写真でした。そこで、ネットに上がっている自撮りしているガガさんの画像をそのまま使えないかと交渉し、実現できました。
また、今回は若い人へのメッセージでしたので、今までの資生堂ブランドの固まったイメージを少しでも崩せるように、ロゴマークを大きくし、さらに椿マークもとりました。先方への提案前に先輩に見せたところ「これはない」と怒られたりもしましたが、仲畑さんだけは「いまの時代はこれぐらいがいいんだよ、これでいけ」と背中を押してくださいました。
スズキ「HUSTLER(ハスラー)」の仕事では、コピーの「遊べる軽、出た!」を目いっぱい大きくデザインしました。デザイン上のコピーの大きさは、メッセージの“声量”の大きさと同じだと思っています。僕は今回のコピーを見て、これで軽自動車というジャンルは「遊べる軽」と「遊べない軽」に分類されたと思いました。そこで、そのメッセージが誰にでも届けられるように、画面に対して目いっぱい大きくレイアウトしたのです。
福里:博報堂のクリエーティブといえば、アートディレクターとコピーライターがコピーを入れるか入れないかで、延々ともめ続けているというイメージが強かったですよね。大貫卓也さんのエピソードなどをよく聞いていたので。最近はそうでもないんでしょうか。福部さんも博報堂ご出身ですが、いかがでしょうか。
福部:僕はコピーを入れるかどうか迷ったら、絶対に入れた方がいいと思っています。最近もCMに関する反応を調べようとTwitterを見ていると、やはりコトバに反応しているんですよね。だからコトバがないと、広告を見た人が気になっても、どう検索していいのか分からなくなると思います。ハッシュタグを増やすつもりで、コピーは絶対に入れた方がいい。
福里:確かにそうですね。コピーがないということは、広告の呼び名がないということですからね。