「伝える」だけでは意味がない。評価につながる「動かす」文章の書き方

仕事において「文章」とは、もっとも使用するであろうツールです。メール、企画書、報告書、議事録、依頼状など…各場面によって生きてきます。そのため、仕事を動かすうえで、文章は大きい影響力を持っています。その人の評価自体を決めてしまうほどです。

今回は、3月1日に発売された拙著『人より評価される文章術』(発行:宣伝会議)から、ロジカルライティングを専門とする高橋慈子氏、エモーショナルライティングを専門とする堀内伸浩氏の著者2名それぞれに分けて、ライバルより、同僚より、他社より評価される文章術について2回の記事で触れていきます。

文:高橋慈子

「メールや報告書など、仕事の文章を書くのに時間がかかる」、「伝えたいことが多くて、長い文章になってしまう」、このようなお悩みを持っている人はいませんか?企業のビジネス文書研修で、受講者の方々に「文章を書くことの課題や問題は何ですか」とお聞きすると、よく出てくるご意見です。

多くの人がビジネス文書の書き方にお悩みを持っていることには、理由があります。それはビジネスでの文章の書き方を体系的に学んできていないから。学校で学ぶ国語では、小説や随筆が題材に取り上げられ、感想文や自分の考えをまとめた文章が中心です。ビジネス文書は、それらと組み立て方や表現が異なりますから、上手く書けない…、苦手だと考えるのも無理がないのです。

一方で、仕事で文章を使ってコミュニケーションする機会はますます増えています。この10数年、連絡手段としての電話のやり取りはめっきり減り、メールを使うことが一般的になりました。文書をメールに添付して、関係者に送ることも多いでしょう。このように仕事のやり方が変化している中で、文章力はコミュニケーションの鍵として、重要なスキルとなっています。

また、ビジネス環境の変化は、求められる文章の質を変えています。同じ職場で共に働く先輩を見て仕事を覚えることが中心だった昭和の時代と異なり、仕事の内容は複雑化し、働く仲間は多様化しています。市場は海外へと広がり、チームに外国人のメンバーが加わることもあるでしょう。「言わなくて通じる」時代から、「相手に確実に伝わる文章」を使いこなす時代へと変わっているのです。

読み手に確実に伝えるには、情報を整理し、ロジカルに組み立てることが求められます。自分本位に「伝えた」、あるいは「伝えたつもり」では、用をなさないのです。また、間違っていないけれど、余分な情報の多いくどくて長い文章も嫌われます。互いに忙しい仕事の場面で、最後まで読まないと意図が伝わらず、不要な情報が沢山盛り込まれた文章は、仕事をスピーディーに進めることはできません。

目的に合わせたロジカルな構成は、わかりやすい道案内のように目的地までスピーディーに読み手を連れて行ってくれます。目的地で何をすべきかを最初に示しておけば、すぐに行動を起こすことができるでしょう。

このように意図した行動につながり、読み手を動かすこと。これが現在のビジネス文書の最も大きな役割です。読み手にして欲しいことを明確にし、その行動につながるように書くことがポイントとなります。

わかりにくい文章は、往々にして、自分が伝えたいことに終始し、読み手の行動が明確に書かれていません。その結果、「何をして欲しいのか、よくわからない」という残念な状態になっています。

文書の役割を最大限に果たすためには、書く前の準備として文書の目的や読み手をしっかりと分析しておくことも重要です。

人より評価される文章術』では、技術的な情報をわかりやすく伝える「テクニカルライティング」の手法を使ったロジカルな文章の書き方を、第1章から第3章でテクニカルライターである著者、髙橋慈子がまとめました。読み手の分析手法やロジカルな構成の組み立て方、表現技術を解説しています。応用しやすいようビジネス文書での例も紹介しています。

そして、人を動かすための文章は、ロジカルな組み立てとわかりやすい表現技術だけでは足りません。心を動かす「エモーショナル」な表現についても理解し、文章に取り入れることが大切です。何故なら、文章の読み手は「人」だから。人は「論理」だけでは動かず、「感情」が伴ってこそ、動くものだからです。

読み手を動かすエモーショナルな文章術については、共著の文章コンサルタント、堀内伸浩さんが第4章から第6章で指南してくださっています。

ロジカルとエモーショナルの両方を備えた文章を使えば、仕事は今より速く進みます。毎日の仕事の中で、書き、読んでいる大量のメール文が変わったら、仕事の効率がぐんと上り、時間短縮できるでしょう。相手本位の文章は信頼につながり、評価を高めます。

筋トレに近道がないように、文章力を鍛えることもコツコツを続けることが大事です。コツコツした積み重ねの結果、ある日「仕事がスムーズに進み,結果が出せる文章力」が自分のものとなっていることを実感することでしょう。「あなたの書く文章は、わかりやすいですね」という感想とともに。

その一歩を踏み出すコーチ役として、『人よりを評価される文章術』をお役立てください。

次回は、エモーショナルライティングを担当した堀内さんが執筆されます。

(書籍案内)

人より評価される文章術

本書では、報告、提案、説明、説得など、仕事の場面ごとに生きる文章テクニックを公開しています。ビジネスの文章にセンスも文学力も必要ありません。誰でも簡単に身に付けられる、仕事を動かし、評価されるために有効な「理性に訴えるロジカル・ライティング」と、「感情を動かすエモーショナル・ライティング」を学びます。
 
はじめに/文章の出来が評価につながる/第1章:理性に訴えるロジカルな文章とは/第2章:相手を動かす、ホウレンソウで生きる文章 ~報告書、連絡メール、相談メール~/第3章:相手に理解してもらう、説明で生きる文章 ~商品説明文、手順書、マニュアル~/第4章:感情を動かすエモーショナルな文章とは/第5章:相手に納得してもらう、提案で生きる文章 ~企画書、プレゼン資料、チラシ~/第6章:相手に感動してもらう、依頼で生きる文章 ~依頼状、お願いメール~/おわりに

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