2016年のダイレクトメール(DM)への投資額は3804億円で前年比99.3%と微減(電通調べ)したものの、顧客データを活用したターゲティングDMや、くじやクーポン付きのハガキDMによる店舗への集客施策としての活用は伸長している。受け手に直接リーチできる点においてメリットがあるDM。どのようなDMが人を動かすのだろうか。
日本ダイレクトメール協会が5月26日に東京都内で開催した「DM事例成功セミナー2017 東京」から、「第31回全日本DM大賞」上位入賞DMのポイントを2点、紹介する。同セミナーは、グランプリ以下9つの事例について、各担当者が、DM制作のプロセスについて講演した。6月8日には福岡で、9日には大阪でも開催する予定(一部講演内容は異なる)。
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家を建てた時の『伝えたい』という気持ちを利用
セミナーには、大賞を受賞した公共工事や注文住宅を手抱ける滋賀県の大兼工務店の作品を制作した滋賀県立大学 人間文化学部 助教の山田歩氏や、金賞のCD・DVDレンタルのTSUTAYA(ツタヤ)三軒茶屋店の作品を手がけたCCCマーケティングの石井大樹氏などが登壇。
グランプリを受賞した大兼工務店(滋賀県)のDMは、見込み顧客獲得を目的としたものだった。同社は、まず“飛び出す絵本”のようなカードタイプのDM「ミニ新居」を最近家を建てた施主14組に宛てて発送。開くと手描きイラストの新居とそこに住む人が立体的にせり出す。住居の図面や写真から描き起こしたものだ。
ポイントは、受け取った施主が希望すれば、「転居のお知らせ」として友人・知人へ、同じDMを送れるようにした点。新しい家ができたことを周囲にさりげなく知らせたい施主の気持ちをうまく汲み取った。10組が「転居のお知らせ」として用い、計220人の友人・知人が対象となった。
考案者は、滋賀県立大学の山田歩助教(人間文化学部生活デザイン学科)。「大兼工務店にとって、既存顧客の知人は有望な見込み客となりますが、直接アプローチするのは難しい。そこで家を建てた時の『伝えたい』という気持ちを利用し、施主からその知人(見込み客)に届くようなDMにしました」(山田氏)
イラストは山田研究室所属の学生・三輪あさひさんがひとつずつ制作した。
地域性に着目で来店率56%
金賞を受賞したTSUTAYA三軒茶屋店の作品「特別マイバッグDM」は、CDやDVDをレンタルする際に用いる「レンタルバッグ」に湯のみを3つ並べたイラストをデザインし、クーポン券を同封したもの。
制作の背景についてCCCマーケティングの石井氏は、「TSUTAYA三軒茶屋店は、休眠顧客の掘り起こしが課題でした。どうすれば再来店していただけるかを考えた際に、競合店ではなくTSUTAYAを選んでもらうにはどうすればいいかに主眼を置き、お客さまになじみ深い『レンタルバッグ』と三軒茶屋という地域性に着目して制作しました」と振り返った。約2000通発送し、来店率は56%に達したという。
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