【前回の記事】「不適切な「ネット広告枠」を利用している広告主が、炎上してしまう時代を迎える」はこちら
炎上覚悟のネット動画が増えている?
最近、企業のネット動画の表現を問題にした炎上騒動が立て続けに起こっているようです。
こうした炎上騒動が増えている背景の一つには、コラム「テレビCMの炎上が拡大する要因はメディア環境の変化にも。企業はどう向き合うか?」でも書いたように、広告に批判が集まる様子を、メディアが積極的に取り上げるようになったという環境変化も大きく影響していると思います。
しかし一方で気になるのが、これだけ昨年ぐらいから企業の広告を起点とした炎上騒動が続いているにもかかわらず、あえてギリギリの線を越えたチャレンジをしているネット動画が増えているように感じられる点です。
例えば、ネット動画における性的なイメージを想起させて炎上した事例は、昨年の鹿児島県志布志市の「うなぎを少女に擬人化した動画」のケースが有名です。
この動画は、公開からわずか5日で公開中止となったことからも、志布志市側が思わぬ騒動に困惑したことが伺えます。ある意味、想定外の騒動だったと言えるでしょう。
一方で今月に入り、宮城県の観光PR動画でも同様に、性的な表現が問題となりました。宮城県の村井知事が「可もなく不可もなくというのは関心を呼びません。賛否両論あったことが、逆に成功につながっている」と騒動を肯定する発言をして、批判を集める結果にもなりました。
参考:バズるためには”エロ”不可欠?壇蜜さん出演のPR動画で宮城県が炎上
この発言だけ聞くと、今回の宮城県の観光PR動画は、志布志市のケースとは異なり、最初から炎上覚悟で動画を作成したかのように聞こえてしまう人もいるでしょう。ただ、ある意味、この発言はネット動画の企画における現状を言い表しているとも言えます。
先日、開催された「アドテック関西 2017」の基調講演に登壇した近畿大学の世耕石弘さんも、古臭い大学の序列をぶっ壊すためには、とにかくバズらせることが重要だと考えていると話していました。
例えば、「早慶近」というキーワードを掲げた新聞広告は、批判されることを事前に想定していたそうです。
参考:【関西の議論】「ライバルは早慶」“ぶっ飛び広告”に賛否両論
「大学の広告」という決まりきった常識にとらわれるのではなく、大阪の企業として尖る表現をする必要があり、そこを常に模索しているという話をされていました。
バズれば、その盛り上がりと比例して、ある程度の批判が発生することは珍しくありません。近畿大学は、そうしたことも踏まえて新しい企画に挑戦し続けている大学であるのは間違いありません。
そういう意味では、宮城県の取り組みも近畿大学と同様、全国に多数ある自治体のプロモーションの中で、バズるために尖ったチャレンジだった、と言うこともできなくはないでしょう。ただ、個人的にこの近畿大学と宮城県のPR動画において、大きな違いとして感じているのが、バズるネタにおける「らしさ」の視点の欠如のように感じています。