「ぜんぶ俺のせいだ。」― 自分を過大評価する病の予防策を公開


【前回】「書籍『その企画、もっと面白くできますよ。』に込めた“熱い思い”」はこちら

中尾孝年(なかお・たかとし)
電通 クリエイティブディレクター

1970年生まれ。京都府出身。広告史に残る話題作、AKB48江口愛実を考案。メディアをまたいだ立体的なコミュニケーションデザインを構築し、新しく斬新な仕組みの広告を発信して、広告業界以外からも注目を集めている。(主な仕事) 江崎グリコ/アイスの実「江口愛実」、POCKY「デビルニノ」「CM二宮」「YMO」、サノヤス・ヒシノ明昌/企業CM「造船番長シリーズ」、アストラゼネカ塩野義製薬/コレステロール値啓発「貼り紙篇」「マルチエンディング篇」など。


今回のコラムは、JR東日本のキャンペーン「JR SKI SKI」を思わせるタイトルですが、スキーみたいに、このコラムが滑らないことを祈ります。

1回目のコラムからだいぶ間があいてしまったのですが、これには訳があります。実は今、結構仕事がバタバタのパツパツで大ピンチなんです。

でね、宣伝会議の担当編集者さんに「ちょっと仕事が忙しいのでコラムは最初の1回で終わりにしてもいいですよね?」って連絡を入れたんです。はいポイントは「いいですか?」じゃなくて「いいですよね?」という「はい、いいです」を前提とした聞き方です。

書籍『その企画、もっと面白くできますよ。』。
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ところがどっこい「そうですかそれは大変ですね、でも中尾さんが最初に3回のコラムにするとおっしゃったので3回連載ですって発表しちゃってますよ」って。や、や、やばい…。

正直、3回連載なんて宣言しちゃった1カ月前の自分を恨みました。

でもね、これって企画をする時に陥る罠に似てるんです。

その名も、自分を過大評価する病。

そうなんです、1カ月前の僕は僕のことを過大評価していたんです。「まあ、どんだけ忙しくなっても3回ぐらいならコラムもちゃんと書けるやろ、何と言っても俺コピーライターやし」って。ところが現実の自分はそうじゃなかった。で、そ、そ、そんなはずでは…って今なってます(笑)

広告の企画をする時も同じで、ついつい自分の考えたアイディアは過大評価しがちです。「うん、これならいける、話題になること間違いなし」とすぐに思っちゃう。で、いざ世の中に出してみると、そ、そ、そんなはずでは…って。

だから企画をする時や「面白い」を考える時には、自分の考えたアイディアに惚れ込む自分と同時に、そのアイディアを誰よりも厳しく冷静に見極めることができる自分も持たなくちゃダメなんです。それが自分を過大評価する病の一番の予防策です。

と、半分自分に言い聞かせるかの様なコラムを書いてみましたが、なかなか筆が進みません(涙)

だって、だって、仕事が忙しいんだもん!時間がないんだもん!クライアントが言うことコロコロ変わるんだもん!部下の出してきた案が面白くなかったんだもん!そんな時に限って新しい仕事がまた入ってくるんだもん!しかも今は夏休みだから休みの日は子供と遊ばないとダメなんだもん!などなど。

僕がコラムを書けないことを他の何かのせいにするのはとても簡単。いくらでも「できない理由」は思いつきます。でも、これが良くない!!!

僕は本の中で電通中部支社(名古屋)時代の話に触れています。今ではCCN賞なんかを中心に若いクリエーターたちからも注目されていて、とてもクリエイティブが活気にあふれているイメージの名古屋ですが、実は僕が配属された当時は全然違いました。

かつてヨーロッパの人々が未開の地であったアフリカを暗黒大陸と呼んでいた様に、当時の名古屋は「広告暗黒地帯」でした。

「このままではマズイ、何とかしなくちゃ」と思って若手の有志たちでよく集まってクリエイティブを熱く語り合ったりしました。そこで僕らはある一つのルールにたどり着いたんです。そのルールとは…

「名古屋」のせいにしない。

保守的な地域だ、クライアントも保守的だ、予算が少ない、時間も少ない、クライアントの数も少ない、そしてCDがいけてない、先輩もいけてない、さらに営業もダメダメだ、きわめつけはオーナー社長がわがままだ、などなど。

名古屋の広告がつまらない理由を名古屋のせいにしていたら、いつまでたっても名古屋の広告は「面白く」生まれ変わりません。

だから、僕らは名古屋のせいにするのをやめにしたんです。そしたら少しずつ名古屋の広告は変わり始め、クリエイティブの雰囲気も変わり始め、ついには皆さんがご存知の、今の活気ある名古屋クリエイティブに生まれ変わりました。

名古屋時代に手がけたテレビCM ミエライス/無洗米「バレーボール」篇
無洗米のベネフィットを「手が離せないほど忙しいあなたに。」というコピーで表現

ほらね?

僕がコラムをなかなか書かなかったことをネタにして、面白おかしく話をすれば、企画に役立つ真面目な話もこんなにスムーズに頭の中に入ってくるんです。やっぱり「面白い」ってすごい力があるでしょ?

もっと「面白い」を使いこなしたくなってきたでしょ?
だったら良い本があります。「その企画、もっと面白くできますよ」っていう本です(笑)!

はい、では今日のおさらい。

企画が面白くないのは、アイディアが面白くないのは…
ぜんぶ自分のせいだ。

コラムを今まで書いていなかったのは…

ぜんぶ俺のせいだ。

『その企画、もっと面白くできますよ。』
出版記念セミナー開催

日時:2017年09月09日(土)19:00開始 20:30終了
場所:宣伝会議中部本部セミナールーム
   (愛知県名古屋市東区東桜1-13-3 NHK名古屋放送センタービル6階)

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