「ARの本質は“省略” そこに斬新はあるのか?」
川田十夢(AR三兄弟)
僕らが最初にAR広告を手掛けたのは約1年前、まだクライアントに提案しても、総じて「?」って頃。「AR=拡張現実」という概念を専門用語で説明しても伝わらないので、まずはその原理の斬新さが一瞬で分かるプロトタイプ作品を5つほど作った。それがAR三兄弟の始まり。
未だに、iPhoneをかざしてそこに見えるのがARだと思っている企画担当者がいる。間違いではないが、全てでもない。場所に紐付いたタグが可視化される、そのアイデアはセカイカメラだけで十分。追随する類似アプリがたくさん出たけど、結局それを凌駕するアプリは現れなかった。所詮真似ごと、当たり前のことである。
僕らは最初から「セカイカメラではできない全てのこと」をコンセプトに、ARのプロトタイプを作った。セカイカメラはインフラを目指したのに対し、僕らは誰でも分かる作品を目指した。その分かりやすさは、多くのクライアントを呼び込み(注)、僕らは国内におけるAR広告の第一人者となった。多くのARアプリが存在したのに、なぜAR三兄弟が選ばれたのか? それは「斬新」の正体をいち早く捉えていたからだ。ARという技術には、様々なプロセスを省略する機能がある。省略によって、人々は「斬新」な印象を抱く。
これから、AR広告を企画しようとする皆さん。アイデアに「斬新」は宿っていますか? それが欠けていると、AR広告としては失敗に終わると思います。失敗しないためにはどうすればいいか、以後3回にわたって解説します。(「宣伝会議」12月1日号から)
※毎月1回掲載(全4回)、次回は12月28日掲載予定
(注)AR三兄弟が手がけた企業プロモーションは、日産自動車、パルコ、フジテレビジョンなど多数
(かわだ・とむ)
未来開発プロダクション ALTERNATIVE DESIGN++ 主宰。ARを実体化する「AR三兄弟」として、国内外のAR広告を数多く手掛ける。『AR三兄弟の企画書』が絶賛発売中。Twitter IDは「cmrr_xxx」。