【前回】「「CMO:最高マーケティング責任者」の存在価値を「CFO:最高財務責任者」と比較してみる」はこちら
池田 想 氏
博報堂コンサルティング プロジェクトマネジャー
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、株式会社博報堂に入社。営業局、マーケティング局を経て現職。博報堂では、主に消費財などのクライアントを担当し、広告・コミュニケ-ションの企画・実施に従事。現在はコンサルタントとして、主にコーポレートブランディングやグローバルマーケティング領域における戦略立案・実行支援などのプロジェクトに携わる。
CMOについて、これまで組織構造の観点とCFOとの対比の観点からお伝えして来ましたが、最終回の本稿では、いよいよ具体的な仕事の中身に踏み込みたいと思います。
マーケティングというのは、その分野の特性上、企業や業界によって業務内容や役割が大きく異なります。そのためCMOの仕事の中身も一律に規定するのは難しいのですが、煎じ詰めればCMOがマネジメントすべき対象は5つに集約されると私は考えています。すなわち「①ブランド」「②バリューチェーン」「③パートナー」「④ナレッジ」「⑤データ」です。
以下、順番に見ていきましょう。
1 ブランドマネジメント
CMOがマネジメントすべき対象の中でも、最も重要なのがブランドです。一言でブランドと言ってもその内容は多岐に渡り、とても複雑な構造になっています。階層としては大きく「コーポレートブランド」と「プロダクト・サービスブランド」に分けられ、企業によってはさらに細分化されている場合もあります。
コーポレートブランドマネジメントは、CMO自らが直轄の専門組織・専門スタッフを率いて推進すべき業務領域です。顧客・社員・投資家・社会に対して企業姿勢やブランドの思想を伝え、さらには具体的な行動で示すことが求められます。
一方、プロダクト・サービスブランドマネジメントは、大企業の場合、CMOではなくブランドマネジャーにしっかりと権限と責任を委譲し、彼らにリードしてもらうべき業務領域になります。CMOはブランドマネジャーとの間で明文化されたブランド価値規定(定性目標)とKPI(定量目標)を共有した上で、その成果を厳しくチェックする必要があります。
また、ブランドマネジャーは将来のCMO候補でもあるので、後継者育成の観点も忘れてはいけません。
複数事業を抱えている企業やグループ経営を推進している企業については、コーポレートブランドと各プロダクト・サービスブランドの構造を全体最適化する、「ブランド体系構築」も大きなテーマとなります。
2 バリューチェーンマネジメント
第1回でも述べたように、「マーケティング」というのは単一機能ではなく、「(顧客視点によって)機能を束ねる“機能”」です。そのため、バリューチェーンの各機能を顧客視点によって統合するのもCMOの仕事になります。
外部環境変化の激しい昨今では、通常、全く同じビジネスモデルが何年も変わらずに済むということはなく、常に進化し続けることが求められます。あるいは、数十年に一度の思い切った企業変革をリードすることが必要な場面もあるかもしれません。
アパレル業界を例にとれは、古くはユニクロが小売業からSPA業へ、最近では丸井が百貨店ビジネスから不動産×金融ビジネスへシフトしたような、思い切ったバリューチェーンの再構築は今後もどんどん増えてくるはずです。長年慣れ親しんだやり方を変えるのは簡単ではないですが、その変革の旗手となるのもCMOの役割なのです。
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