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ファンは「認識しにくい外部資源」
「ロイヤルユーザーやファンは企業にとって重要な資源となりえるが、一般的には認識しにくい資源であり、見落とされがちではないか」
書籍『なぜ「戦略」で差がつくのか』の著者としても有名な資生堂の音部大輔さんは、こんな問題提起を、「アンバサダーカンファレンス」(アジャイルメディア・ネットワーク主催)の基調講演でされました。
このイベントは「アンバサダープログラムアワード」の受賞式を兼ねて、筆者とアジャイルメディア・ネットワークで企画しているもので、音部さんの基調講演をはじめ、ファンやアンバサダーを重視したマーケティングアプローチを取っている企業のプレゼンテーションを軸に実施しています。
音部さんは、著書の中で「戦略とは目的達成のための資源利用の指針」であり、資源には内部資源と外部資源という軸と、認識しやすい資源と認識しにくい資源という軸で分けることができると書いています。
自社のロイヤルユーザーやファン、そしてアンバサダーは、この「認識しにくい外部資源」であるというのが音部氏の定義です。
この定義を聞いていて興味深かったのが、広告予算や人的リソースなどの内部資源が潤沢な企業であれば、ある意味ファンやアンバサダーのようなコントロールしにくい外部資源に頼る必要性は低いかもしれないが、内部資源が少ない企業では貴重な資源になるという視点でした。
実際に、今回のアワード受賞企業のプレゼンテーションを聞いていると、通常のマスマーケティングに比べて地味な点もあるアンバサダープログラム的なアプローチに取り組む企業の共通点が見えてきます。
例えば、象徴的なのはスノーピークでしょう。スノーピークが、今回受賞した企画である「スノーピークウェイ」というイベントを実施するようになったきっかけは、20年前にキャンプブームが下火になった結果、会社が苦境に立たされたことだったそうです。
その際に「もう一度、お客さまの声を聞いてみませんか」と、自社の顧客の声を傾聴するという、数少ない自社の資源に視点を移したことが、現在の躍進につながっているのだそうです。
「よなよなエール 年間契約」で受賞をしたヤッホーブルーイングも、実はクラフトビールブーム後に業績が悪化した際に、ファンとのエンゲージメント重視に特化したことが、現在の成長の起点になっているといいます。
会社が苦境に立たされて、限られた資源のなかで突破口を見いだそうとする姿勢が、気づきにくい外部資源であるファンやアンバサダーの価値に気づくことができるポイントと言えるのかもしれません。