文・天野彬(電通メディアイノベーションラボ 副主任研究員)
「タグる」へのシフトに要注目
はじめまして。電通のメディア部門のシンクタンクチームにて、SNSやスマートフォンユーザーのリサーチを行っている天野と申します。アドタイ初登場となります。
2017年10月31日に、宣伝会議より『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』を出版する運びとなりました。この連載では、その紹介の意味も含めて、書籍のさわりやマーケター注目の事象やその考察を読者のみなさまにシェアしたいと思っています。
僕は学生時代からずっと人と人とのコミュニケーションに関心を抱いてきました。そこにはきっと、友だちの輪の中で楽しく過ごしつつも、そういう関係性の怖さや脆さについて考えてしまっていた10代の頃の経験、そして中学生頃から触れ始めたインターネットの影響が深く関係しているような気がします。
現代は、コミュニケーションのためのツールがどんどん拡張しています。FacebookやTwitterをはじめとして、近年ではInstagramやSNOW、SnapchatなどさまざまなSNSが普及・流行し、自分の近況や体験を(文字というよりも)写真や動画を通じてシェアすることが増えています。そのような「ビジュアルコミュニケーション」が、さまざまな消費文化の波をつくりだすトレンドの源となっていることに注目しています。
僕が重要と位置づけるキーワードは、書籍の帯にも掲げられている「タグる」。これは、ハッシュタグをつけて情報発信を行う(Taggingする)とともに、欲しい情報を“手繰る”ように獲得していくという情報行動の特性を意味しています。ユーザー主導で情報の発信と整理をしながら、それを検索して相互参照し合う様子を表しています。
端的に言えば、「ググる」から「タグる」へのシフトに要注目です。
ユーザー自身も、他のユーザーが発信した情報をより重視し、頼りにするようになっています。みなさんもTwitterやInstagramなどでSNS検索することが増えているのではないでしょうか?そして、そのときにハッシュタグをより活用されているはず。
そう、まさに現代はSNSで「タグる」時代なのです。
では、そんな時代に私たちが取るべき指針は?
書籍では、こうした情報環境の中でどのようにキャンペーンプランニングを行っていくべきかといった「How」の水準はもちろん、なぜこのような変化が起こっているのかにも迫る「Why」の水準へ届く分析を行っています。
そのための、メディア社会学的な視点とマーケティングとのうまい橋渡しが企図された珍しい一冊になっているかと思います。
それは、そういった本が巷に無い中で僕自身が読みたいと思ったこと、さらにはそのような横断的な視点からこそ、なぜシェアされるのか、シェアの本質とは何かについて考察を進められるはずだと考えたことが理由です。
本稿では、書籍の中でも触れている、近年のシェア文化・ビジュアルコミュニケーション文化を代表するハロウィンを「Why」の視点から採り上げてみましょう。