OgilvyRED コンサルタント
Kai Wright氏
また『宣伝会議』2018年1月号(12月1日発売)には、レポートの総集編を掲載します。こちらも、ぜひご覧ください。
2011年に英国に設立したOgilvyREDは、オグルヴィグループでブランドコンサルティング事業を手がける会社だ。同社は今年1月の、グループ横断組織「Ogilvy Center for Behavioral Science(行動科学センター)」の設立にも深く関わっており、クライアントのマーケティング戦略の立案にあたり「Behavior Science(行動科学)」を重視している。
オグルヴィが行動科学に注目する理由について、コンサルタントのKai Wright氏は次のように話す。「コミュニケーションにおいては言語に注目が集まりがちだが、実はジェスチャーや語調など非言語が与える影響は大きい。オグルヴィが行動科学に注目するのは、非言語要素が購買行動に与える影響を踏まえた上で、マーケティング・コミュニケーションを考え実行することが大事だと考えるからだ。カスタマージャーニーを描くとき、私たちはつい、人の購買意思は(認知から購買決定へと)直線的に進んでいくと考えがちだが、その過程で行われる判断には、無意識のうちにバイアスがかかるもの。心理学、生理学、行動科学などに基づいていくつかのポイントを突きながら、生活者を動かしていくことが重要だ」。
意思決定にバイアスをかける6つの要素
人間は1日に、意識的にも無意識的にも膨大な数の決断をしており、その数は成人で3万5000、子どもは3000にのぼるという。「そうした決断のうち95%は3秒以内になされ、65%が理論ではなく感情に基づいて行われる。3万5000もの決断には200のバイアスがかかっており、購買行動についても当然その影響を受けていると言える」とWright氏。
購買行動に影響を与える要素として、同氏は次の6つを挙げる。
- ①(そのときの)感情 ※これにより65%の決断がなされる
- ②シンボル、ロゴ
- ③音
- ④色や形
- ⑤スキーマ(背景知識など)
- ⑥価値観(物事の真否に関わらず自らの信念に近いものを信じる、先入観に左右される、集団の意見に左右される)
決断の65%に影響を与える「感情」を動かすためには、ストーリーテリングが不可欠であり、ストーリーには①キャラクター、②設定、③問題(チャレンジ)、④解決の4つの要素が必要だとWright氏。
「ディズニーは、感情を揺さぶるストーリーを通じて、子どもたちに道徳や倫理観を教える。ブランドのキャラクターや、生活者とブランドの接点、事実に基づいたストーリーを丁寧に描くストーリーテリングは有効な手法だ。人を動かすストーリーは、生活者の属性データだけを見ていては生み出せない。複雑なデータからパーソナルな情報を特定することが求められる」。
行動科学を活用するためのプラットフォームを構築中
現在オグルヴィでは、マーケティング・コミュニケーション領域に行動科学を取り入れるためのプラットフォーム「AMOS」(行動経済学の創始者・Amos Tverskyの名にちなんでいる)の準備を進めている。Ogilvy PRのグローバルCEOも務めたChristopher Graves氏が旗振り役となり、来春のローンチを目指す。
「AMOS」には、行動科学に関する2500のデータが格納され、生活者の決断に影響を与える200のバイアスを解析する。また、行動科学に基づいて複数パターンのクリエイティブを制作してテストすることもでき、クライアントの投資対効果を高めることが可能になるという。プラットフォームの構築と合わせ、「クライアントや社員に、マーケティング・コミュニケーション戦略の立案・実行にあたり、行動科学の考え方を取り入れることを啓蒙していきたい」(Wright氏)とも話した。
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