自治体若手職員と地元企業のタッグから生まれたヒット商品「プレミアム婚姻届」

立川市は人口減少や人口流出の解決に向けて、市の若手職員を集めたワーキンググループを立ち上げた。そこから2016年に生まれ、ヒットしたのが人気の「プレミアム婚姻届」だ。
(本記事は、『地域を変える、アイデアとクリエイティブ! 読本』記事を転載したものです)

立川市「プレミアム婚姻届」。型抜き加工や箔押しを使い、特別感を演出した。photo:Ryoukan Abe

若いカップルが立川市を訪れるきっかけをつくる

立川市が販売する「プレミアム婚姻届(1000円)が人気を集めている。特徴は、複写式のため夫婦2 人の筆跡を残すことができる点と、提出後に台紙に思い出の写真を飾りつけてオリジナルのアルバムとして使える点だ。この婚姻届は立川市外在住者も購入可能で、市内ホテルなどで販売されている。

立川市がプレミアム婚姻届を作成した背景には、人口流出の課題があったという。立川市では25~39歳の女性が市外へ転出している傾向にあり、結婚して定住する女性が少ないことが想定された。

そこで同市は2015 年に地方創生のアイデアを立案する市職員を募集し、ワーキンググループを結成。その一員である二ノ宮真輝さんは「若い女性がどうしたら立川市に興味を持つかという視点で議論しました。ライフスタイルの転換期に着目して出てきた3 つの案の1 つがプレミアム婚姻届です。立川市でしか手に入らない婚姻届を作ることで、若いカップルにまずは立川を訪れてもらう機会を作ろうと考えました」と振り返る。

プレミアム婚姻届を作成する際にワーキンググループが相談したのは、地元立川市で50 年以上経営を続けている老舗印刷加工会社の福永紙工。以前から市役所関連の印刷の仕事も手がけていた。

相談を受けた福永紙工 代表取締役の山田明良さんは20~30代のワーキンググループのメンバーがやる気に満ちているのを見て、面白い仕事になりそうだと予感したという。その後、山田さんが国立市在住のデザイナー、三星デザインの三星安澄さんに声をかけ、地元チームの三位一体でプロジェクトを進めた。

提出後にはアルバムとしても活用できる。photo:Ryoukan Abe

立川市のワーキンググループが出した要望は、「写真が入れられ、かつ結婚式で飾ることもできるデザイン性のある婚姻届」だった。「自治体が出すデザイン婚姻届としては北海道の東川町の例などが知られていますが、調べたところ、結婚式で飾る人が多いとわかりました。そこで、プレミアム婚姻届も式で飾ってもらえ、さらにその後も家に飾ってもらえるように、デザイン的に突き抜けたものにしたいと考えました」と二ノ宮さん。

表紙の窓の部分には型抜きの加工を施し、婚姻届を提出した後はアルバムとしても使えるようにした。また、厚みのある紙を使って、特別感を演出。色は女性に好まれるよう明るい色合いにしている。表紙の窓の中に書かれている「夫妻になる」という言葉は、実は行政独特の言い回し。あえてそれを持ち込むことで、デザイン性と“行政色”が両立した、他にはない婚姻届に仕上げた。

中は複写式になっており、おめでたいイメージの市松模様のデザインになっている。photo:Ryoukan Abe

次ページ 「メディアに注目され市のPRにも相乗効果」へ続く

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