週末の朝、僕は西新宿の高層ビル街をよくランニングするんだけど、今年の夏あたりから、やたらと目にするようになった光景がある。
高速バスの前に集う、色とりどりのレギンスにミニスカート、上はロングスリーブTシャツにカラフルなベストといった装いの若い女の子たちがそう。バスの行先は、高尾山、筑波山、富士山――そう、山ガールたちだ。トレッキングシューズを履いていなければ、そのまま街に出かけてもおかしくないコーディネートが特徴である。
「山ガール」なる言葉が使われだしたのは、ここ2~3年だけど、一気にブームが拡大したのは今年に入ってからだろう。今や原宿を歩くと、そこかしこに山ガール向けのウエアやグッズを扱うショップを見かける。元々、アウトドアショップだったのが、山ガール関係の売り場を大きく広げ、もはやそれ専門といった趣すらある。
実際、僕の周囲でも、今年に入って、週末を山で過ごす女の子たちが一気に増えた。以前は、表参道や渋谷あたりでショッピングやグルメに夢中だった女の子たちが、今や高尾山や北鎌倉の山歩きに夢中である。
なぜ、彼女たちは、そんなに山に登りたがるのか?
――そこに山ガールがいるから。
「そこに山があるから」と言ったのは、イギリスの登山家、ジョージ・マロリーだけど、山ガールたちを山に引きつける最大の要素は、「山ガール」なのだ。
近ごろは「女子会」という言葉も珍しくなくなったが、いつからか、女子が彼氏とではなく、女子同士で遊ぶようになった。その昔、湘南や箱根に遊びに行くには外車の助手席がマストだったし、高級フレンチや高級ホテルも彼氏のエスコートで楽しむものだった。
しかし、今や男性諸氏にかつての財力はない。遊びにしても、女性誌やブログなどからどんどん情報が入ってくる女子たちのほうが詳しい。もはや彼女たちは、彼氏と遊ぶより、女子同士で群れたがる。
そんな時代には、車もいらず、お弁当持参で食事代もかからず、その一方、オシャレを楽しめ、趣味のカメラの腕も試せる「山」は、格好の社交場になる。要は、山で行なわれる女子会である。
そう、彼女たちは、「山ボーイ」なんて求めていない。
草場滋「『瞬』を読む!」バックナンバー
- 第4回 「マジメ化する若者たち」(11/30)
- 第3回 「選択肢のないシアワセ」(11/22)
- 第2回 「特別な1日より、ちょっと素敵な365日」(11/16)
- 第1回 「『ソーシャル発』は直接民主制」(11/9)