【前回コラム】「テレビ広告の再価値化とデータ連携による可能性」はこちら
コラムでは、本書の編集に関わった博報堂DYメディアパートナーズ社員が、各メディアのトピックを紹介します。
『メディアガイド2018』の巻頭インタビューでも触れましたが、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて想定されているテレビ機器の買替え需要は、テレビ業界にとって大きな転換期になると考えています。
特に、この買い替え需要によってほぼすべてのテレビ機器でネット結線可能な環境が整う事になると、今までお茶の間では視聴出来なかったインターネットメディアがテレビ機器で視聴可能となります。既にその流れは始まっていますが、今後更にインターネットメディアの普及による放送局への影響が出てくるのではないかと考えられます。
ただその一方で、放送局が本格的な検討をスタートしているインターネットでの同時送信(リニア配信)には「視聴者へのサービス拡大」、「新たなビジネスチャンス」という2点で、大きな期待を寄せています。平昌オリンピックでは、gorin.jpでの動画配信サービスを、試験的にTVer上でエンベット形式での配信を実施していますし、今後も様々なスポーツコンテンツでのリニア配信が検討されています。
我々も、2018年1月のニューイヤー駅伝、同年1月の箱根駅伝においてリニア配信を各局と試験的に実施しました。それらから今後のビジネス化に向けての課題を抽出している状況です。リニア配信の利用シーンは多岐で、自宅でPCやスマホを使って接触するだけではなく、出先で視聴するニーズも高いことから、例えば、会場周りでのインターネット環境のインフラ整備を運営サイドで整える必要性もあるのではという議論もしています。
また、我々にとって最も重要な広告配信においても、「地上波とインターネット配信のセールスをどう共存させるのか」といったセールスにおける前提条件の整備や、CMの安定的な配信(特に長尺CM配信は課題あり)など、「新しい売り物」としての課題を早急に詰め、今後の実施に向けた検討をしている状況です。
ここ数年で特に激戦化しているスポーツコンテンツ配信領域において、放送局と動画プラットフォームをどう差別化していくのか、もしくは連携していくのか。今後、様々な局面で新たな発想と対応が必要になることが想像される領域に、広告会社としての存在感を強く出していきたいと思っています。
統合アカウントプロデュース局タイム業務推進部
田中豪太
広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2018
博報堂DYグループ各社で長く使われてきた、メディアの広告ビジネスに携わる人のためのデータブック。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の出稿広告主ランキング、ネット広告の種類・効果指標、ターゲット別 メディア接触状況など、各種情報が詰まった「今すぐ使える」1冊。デジタル領域はページ数を増やし、昨年以上に内容を充実。今年は、メディア環境研究所所長が「情報のデジタル化から生活のデジタル化へ」と題して語ったインタビューも収録。