<参加者>
嶋浩一郎氏
博報堂ケトル 代表取締役社長(写真中)
吉田尚記氏
ニッポン放送 ビジネス開発センター ネクストビジネス戦略部副部長(写真左)
橋本吉史氏
TBSラジオ プロデューサー(写真右)
ラジオはものすごい成長産業!?
嶋: ACC賞ラジオCM部門の審査には、様々な側面でラジオに関わる方々に参加していただいています。昨年に続き、今年も審査をお願いしているラジオ局のお二人に、ラジオCM部門審査会の感想やラジオCMが今後どうなっていくとよりおもしろくなるのか、などのお話をいただければと思います。今ラジオ業界が変化をしていく中で、お二人は様々な挑戦や新しい実験をされていますよね。
吉田:ラジオの話をする時に必ず僕が触れているのが、NHK放送文化研究所が出した週間接触者率なんです。日本では、“一週間に5分以上ラジオを聴く人”の割合は37%しかないのに対して、欧米は90%。他のどこの国を見ても70%を下回る国はほぼないんです。
嶋・橋本:ええー!
吉田:だから、日本は世界で最もラジオが聴かれていない国の可能性がある。
嶋:……ということは、それだけ伸びしろがあると言えるよね。
吉田:そうなんです。だから僕は、「ラジオは成長産業だ」とずっと言っているんです。まだこんなにも伸びる可能性がある。それなのに伸びていないのは、恐らく僕らが何かやり損ねていることがあるのだろうと。正解は必ずあるとわかっている、宝探しをしているような状態が今ですね。
嶋:ラジオのチャンスは、人の聴覚しか奪わないというところにあると思うんですよね。主婦が料理をしながら聴けるとか、車を運転しながらとか、映像と違って「ながら力」がすごい。今スマホやスマートスピーカーで聴けるようになって、ながら力が再び見直される時代に突入するんじゃないかと僕は思っています。これって、ラジオCMにとってもチャンスですよ。
橋本:まったく同意ですね。今まではいくら「ラジオっていいんだよ」と言っても聴く手段があまりなくて、ハードが整っていなかったんですよね。この時代において不便さというのはかなり不利だと思っていたのですが、ここ10年くらいかけてradikoやワイドFMで聴けるようになりました。今ほとんどの人がスマホを持っているから、ラジオを聴く手段がないという人がほぼ存在しないわけですよね。
嶋:radikoができたのは大きいですよね。ラジオ受信機を見たことがない、という若者がいっぱいいましたもんね。
橋本:いいものを出している自信はあっても、どうせ聴いてもらえないといったあきらめが作り手側にも少しあったんですよね。でもそれは、「ハードが整いさえすれば俺たちは勝てるんだ」と言いわけできる状態。環境が整ったとなれば、作り手は言いわけができません。聴いてもらえないのは、気づいてもらうためのPRの問題と、そして他媒体に比べて魅力がない、つまりおもしろくないということ。このふたつさえクリアできれば、ラジオは成長産業でしかない。