こんにちは、電通CDCの嶋野裕介と申します。
2年連続でカンヌライオンズに来させてもらいました。
「勉強と研修」が趣味なので、世界中のクリエイターとキャンペーンが集まるカンヌはまさに楽園で、毎日朝から晩まで楽しくキャンペーンを見ていました。
結論からいうと、今年のカンヌに「王者」はいません。
昨年の“Fearless Girl”のような圧倒的応募作はなく、今年はこれ!と言い切れる年ではなかったです。
(※昨年はまとめやすかったのですが…。)
ただ、今年のカンヌは大手企業や国家単位による大きなキャンペーンが上位の受賞を占めており、その分大きな成果を出しているものが多かったです。
そうしたキャンペーンに使われていた手法は、きっと今後日本でも必要になってくるものだと思われるので、今日は2つほどご紹介します。
1、スマート・ハッキング(Smart Hacking)
既存のプラットフォームの仕組みや構造を上手に使い、話題をつくる手法です。昨年、バーガーキングがGoogle homeをハッキングしたCM「connected whopper」は後で怒られていましたが、今年は合法的にプラットフォームの規則を活用した企業が増えていました。
まず事例を2つご覧ください。
◾IT‘S A TIDE AD
Film部門はもとより、複数部門でグランプリやゴールドを受賞した作品です。
スーパーボールのCM枠の中で、洗剤ブランド「Tide」が「スーパーボールで流れているCMは全部TideのCMだ。だってみんなの服が真っ白で清潔だろ」と呼びかけるというもの。
◾️Budweiser「TagWords」
Print部門のグランプリ。
ビールと音楽は親和性が高く、バドワイザーは昔から多くのミュージシャンに愛され、音楽フェスなどでも飲まれてきました。しかしスポンサー費用の関係で、堂々とは音楽祭と絡ませられない。そこでポスターにGoogleでの「検索ワード」だけを表示して、検索結果として見つかる画像でその事実を訴求した施策です。
この2つの事例では、
1. 有名プラットフォーム(スーパーボールであり、Google検索結果)でのルールや文脈を熟知し、
2. その中のコンテンツを勝手に自社コンテンツの一部に組み入れる“装置(アイデア)”を設計
3. その装置をアドで広げることで、コミュニケーションを自走させる
といえると思います。
まさに既存のプラットフォームのルールを“ハッキング”するような仕組みです。
もう少し補足しますと、前者は2・3本目のCMや、番組の間のショートコンテンツにも手がこんでいて、その結果、ユーザーに「全部のCMがTideのCMなんだ!」と言わせることに成功。ユーザーが勝手に「これもTide!」とか遊べる余地をつくっています。
後者は、Googleの画像に大量にストックされた過去のバドワイザー×音楽祭の写真をバドワイザーの広告にしたものですが、その「検索ワード」の出し方も上手でした。いわゆる広告メディアだけではなく、音楽ファンを好きそうな倉庫や街中で違うワードを出すことで、「検索ワード探し」という遊びもコミュニケーション効果を増幅させました。
このように、既存のプラットフォームの文脈をハッキングすることで、通常の広告費用以上の価値を生み出す上手なコミュニケーションだと言えます。
(これ以外にも、複数グランプリを受賞した「Trash Isles」は国連というプラットホームを、「THE MOST WELL REVIEWD CITY ON AMAZON」はアマゾンのレビューというプラットホームをハッキングしています。)