「何をつくろう?」から購買まで食に関わる人々をつなげる土台に
SNSフォロワー数は340万人、アプリダウンロード数は1200万。レシピ動画メディアとして国内最大級の規模を誇るのが「DELISH KITCHEN」だ。アプリとSNSで動画を配信し、月間動画再生回数は6.1億回以上に及ぶ。動画の質は他社レシピ動画と比較しても「テンポが良い」「キレイで見やすい」などの点でユーザーから評価されており、こうした影響力や動画制作力を生かして、食に関するメーカー企業との広告タイアップを積極的に行ってきた。
「今後『DELISH KITCHEN』が、『食』に関わるすべての方をつなげるプラットフォームとなるよう、それぞれのシーンでサービスを充実させていきたい」と語るのは、エブリー 執行役員「DELISH KITCHEN」カンパニー長/編集長の菅原千遥氏。この構想を「DELISH KITCHEN EVERYPLATFORM」と呼び、生活者が「何をつくろう?」と考えるところから食材を購入するまでのさまざまな接点で事業展開している。
昨年末から取り組んでいるのが、オンラインとオフラインをつなげるEC施策やO2O施策。EC施策では、「Amazonフレッシュ」などのネットスーパーと連携し、つくりたいレシピに必要な材料をボタンひとつで購入できる仕組みを整えた。O2O施策では、アプリとリアル店舗の橋渡しをするクーポン(メーカー企業が出稿した商品を購入すると、ユーザーにポイントが還元される)とWebチラシ(店舗チラシの電子版とレシピ動画を紐づけて表示)のサービスを通じて、食品メーカーにとっては販売促進を、小売店にとっては来店促進を支援している。
目下の注力領域は小売店の目線に立った販促支援
アプリとリアルな購買を“つなぐ”だけではない。リアルな購買のシーンを売り場で後押しするために「現在、最も注力しているのが、小売店のサポートだ」と、「DELISH KITCHEN」カンパニー リテールソリューションズマネージャーの鵜飼勇人氏は話す。
「特長は、小売店さまの課題に寄り添いながら集客・購買促進の両面で支援できるサービスです」(鵜飼氏)。現在、小売店向けに提供しているサービスは①店頭サイネージ、②レシピカード、③Webチラシの3点。どれもすでに小売業に浸透したアイテムではあるが、「配信するコンテンツの用意が難しい、本部一括で配信内容を管理する手段がなく店舗に任せきりになってしまう、店頭で配信している内容が売り場の展開と合っておらず売り場を荒らすことになっている、などの課題があると伺っています」(鵜飼氏)。そこで、同社では小売店の目線で以下の支援サービスを開発した。
①店頭サイネージ:小売店の本部が管理画面で配信コンテンツを一括管理できるシステム。自社制作の静止画・動画も流すことができる。一方で店頭でもコンテンツを差し込むことができ、例えばその日の売り場に合わせて、1万7000本以上ある豊富な「DELISHKITCHEN」のレシピ動画から店頭で自由に配信設定することも可能。
②レシピカード:持ち帰り用に、店頭に自由に配置できる。
③Webチラシ:店舗のオススメ商品を「DELISHKITCHEN」アプリで訴求し、来店促進に繋げることができる。
「売り場に合ったコンテンツを適切に配置することで、小売店さまの売り場づくりをサポートしたい」と鵜飼氏。すでに導入が進んでいる小売店では売り場に即したレシピ動画を店頭サイネージで配信し、一体陳列を実現することで、訴求した商品の期間内数量PI値(レジ通過客1000人当たりの購買指数)が290%上昇した事例もあるという。
このように小売企業と連携することでPOSデータを取得し、「DELISHKITCHEN」ユーザーのIDと掛け合わせることで「認知」「興味関心」がいかに「購買」に結びついたのか、レシピ動画によって態度変容をもたらせたのかを検証できる基盤をつくる。これが「DELISH KITCHEN EVERYPLATFORM」の構想だ。「将来的には、取得したデータを食に関わるメーカー企業にフィードバックしたり、レシピ動画づくりに生かしていくことで、食にまつわる、あらゆるシーンに貢献していきたい」と菅原氏も語る。
自社メディアの運営、メーカーや小売企業のサポート以外にも、メディアとの協業コンテンツの開発や、「DELISH KITCHEN」ブランドオリジナルのキッチンツールの開発も手掛ける。「DELISH KITCHENプレミアムメディアプログラム」の名で、人気雑誌や書籍とコラボしたレシピの配信を行い、最近では「クッキングパパ」など有名コミックに登場するレシピを動画化する取り組みも。
また、「DELISH KITCHEN」ブランドで開発したキッチンツールは、8月から本格的に店舗販売をスタートしたばかりだが、すでに導入されたスーパーでは他の調理器具以上の販売数を記録したり、棚単位での導入が進んだりと反響を呼んでいる。レシピ動画制作やさまざまな企業との広告タイアップによって磨かれてきた「DELISH KITCHEN」の制作力が、新商品開発の場面でも生かされているのだ。
「これまではレシピ動画で『今日、何をつくろう』という消費者のニーズに応えてきた。今後はよりリアルな買い物のシーンに役立つよう、食に関わるさまざまな企業との連携も視野に入れながら事業を広げていきたい」と鵜飼氏。食のプラットフォームとしての「DELISH KITCHEN」に今後も注目だ。次号の本連載では、「DELISH KITCHEN」と取り組みを開始したライフコーポレーションでの活用事例に迫る。
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