アクセンチュアは3月7日、この1年で企業が押さえるべき世界の最新トレンドをまとめた「フィヨルド・トレンド2019」の記者向け説明会を開催した。
「Fjord(フィヨルド)」はアクセンチュア インタラクティブ傘下のデザイン会社。「フィヨルド・トレンド2019」は、同社の1000名超のデザイナーや開発者が議論を重ね、抑えるべき7つのトレンドを定義してレポートとして発表したもの。
2019のトレンドテーマとして提示されたのは「Value(価値の探求)」。「価値とレリバンスの探求」をメタテーマに定義し、そこから次の7つのトレンドが発表された。
説明会に登壇した、アクセンチュア デジタル コンサルティング本部 アクセンチュア インタラクティブ プリンシパル・ディレクターの浦辺佳典氏は「商品サービスが飽和し、多様な選択肢がある現代。生活者は自分にとって、真に価値あるものは何かを改めて問うようになっている。企業にとっては、デジタルテクノロジーの浸透で多様なサービス提供の可能性は広がっているものの、消費者が求める自分にとって真に価値ある提案をできるかどうかが求められている」と「Value」というテーマについて説明した。
「フィヨルド・トレンド2019」が提示する7つのトレンド
1.沈黙は金なり
情報洪水の時代、生活者は大量のメッセージに疲れてしまっている。本当にこの環境は私たちの生活を便利にしているのか。デジタルテクノロジーが健康にもたらすリスクも問題になっている。「イギリスでは若者の健康保護を目的に政府がソーシャルメディア利用におけるガイドラインを作成するといった動きもある。こうした流れを受け、人間の本質的な生き方を邪魔しない、マインド・フル・テクノロジーの方向にシフトしている」(浦辺氏)。
2.最後の藁?-地球の限界
地球規模での環境破壊が問題になっている。環境に配慮した企業活動を謡うことはこれまでにもあったが、生活者の環境に対する意識がますます高まる中で、単なるメッセージ発信ではなく、企業としての姿勢を示す必要に迫られている。新しいものをつくって売って終わり、製造してゴミが出るというモデルではない、製造から消費までの流れが循環するモデルへと強くシフトしてく。「製品・サービスを設計する際に、生活者やパートナーを巻き込んだ循環するエコシステムを考える必要がある」(浦辺氏)。
3.データ・ミニマリズム
個人データの流出、不正使用の問題を受け、生活者のデータに対する意識が高まっている。その中で個人が自分のデータを自身でコントロールし、かつ企業に共有することで利益を得られる資産であるという認識を持ちつつある。こうしたトレンドを受け、企業は信頼と透明性を確保するため、取得すべき必要最小限のデータを見極めた上で、何を目的でどのデータをどのように利用し、何を対価として提供するかを明言する必要がある。
4.縁石の先に
多数のモビリティサービスが誕生し、都市においては移動や配送の選択肢が広がっている。モビリティサービスの競争は今後も激化し、生活者や移動するための手段をシンプルに選ぶようになっていく。それに伴い、支払い体系や都市づくりの点において従来の常識に変革が起こる。また、小売・店舗体験においても、個人顧客だけでなく地域・コミュニティ・都市の規模でデザインする必要が生まれていく。
5.包括性に潜む矛盾
これまでのデモグラフィック属性でのセグメントで対応しきれない時代。枠にはまったセグメントではない生活者の捉え方が必要とされている。企業においては、すべての人に好かれようと思わないブランドとしての強い意志を示すことが必要であり、その意思に共感をする人たちを顧客にしていく発想が必要である。また数字では可視化できないような生活者のインサイトに迫る必要があり、デザインリサーチの重要性も増していく。
6.空間の探求
デジタルが浸透することで、フィジカルの重要性が高まっている。さらにデジタルとフィジカルが絡み合っていくにつれ、今後はそれらの枠を問わずひとつの空間としてエクスペリエンスを捉える空間デザインが重要になる。
7.合成現実
フェイク動画に代表される、合成された世界がリアリティを増している。企業はこのリスクに向き合う必要がある。
浦辺佳典氏は「生活者を取り巻く環境の変化が、サービスのトレンドに色濃く反映されたレポートになっていると思う。この環境では生活者の声や価値観に耳を傾けることが出発点になる。具体的にはレポートからは『生活者は情報の洪水に溺れ、疲れている』、『生活者は自らの意思を持ち、行動で主張する』、与えられた商品サービスに合わせるのではなく自分の生活にあったものを探すことができるなど『“わがまま”になった』といったトレンドが示されている」と説明した。