MAツールがBtoBビジネスを加速させる スリーエムがグローバルで「Oracle Eloqua」を導入する理由

一般消費者にとっては、ふせんを始めとした商品でおなじみのスリーエム ジャパンだが、世界70カ国に展開する、化学・電気素材メーカーの同社の売上の多くを占めるのは、実はBtoBの商材だ。産業向けのフィルム製品、粘着テープなど多様な商品を抱える同社では、近年テクノロジーを活用したマーケティング機能を強化。人的営業だけでは捉えきれない、顧客のニーズを緻密に把握し、それぞれのステータスに合わせたコミュニケーションを実現するため、マーケティングオートメーション(MA)ツールの「Oracle Eloqua」を活用した先進的な取り組みを進めている。

スリーエム ジャパン カスタマーエンゲージメント部長 田中訓氏
大学卒業後、コンピュータ専門誌の編集者としてキャリアをスタート。アップルジャパンやアドビシステムズにおいて、20年以上のデジタルマーケティングおよびeCommerce業務経験を持つ。2011年よりメーカー スリーエム ジャパン。

商品は約5万点 MA活用でお客さまのステータスに合わせたマーケティングを実行

化学・電気素材メーカーのスリーエム ジャパンでは、BtoB事業においてもデジタルマーケティングに注力し、成果を出している。その取り組みの中核になるのが、カスタマーエンゲージメント部長の田中訓氏だ。

なぜ同社は、BtoB事業においてもマーケティングが重要だと考えているのだろうか。
田中氏はその背景について、製造業全体が抱える課題があると指摘。「良いものをつくれば売れる、新規顧客を獲得できるという考えは通用しなくなってきている。競合環境も日々厳しさを増す中で、需要を拡大するためには、マーケティングの力は必須」と話す。

同社の場合、既存顧客へのハイタッチセールスにおいては成功していたものの、新規顧客開拓や既存客への新規製品の提供を増やしていくためには、企業の意思決定のプロセスに合わせたマーケティング活動が求められているのだという。

しかし、スリーエムはBtoB事業だけで、合計5万点数の商品を抱える大企業だ。多様な商品群において、個々のお客さまのステータスに合わせた緻密なマーケティング施策を実施する上では、テクノロジーの活用が必須となる。

そんな同社のマーケティングを支えているのは、グローバルで統一して導入しているマーケティングオートメーション(MA)ツール「Oracle Eloqua」だ。もともとスリーエム社は各国が独自にMAツールを活用してきたが、グローバル戦略の中で「Oracle Eloqua」をMAツールとして世界各国の同社法人で導入・統一を決めたという。

グローバルで事業を展開するスリーエムのようなBtoB企業においては、「Oracle Eloqua」を多く採用している傾向にある。最も高機能であるにも関わらず、使いやすいこと、細かい権限設定や高いセキュリティなどが支持される理由だ。

デジタルマーケティングのデータをワンインスタンスで集約するメリットとは

「BtoB企業の営業においては、お客さまと強い関係性を持ち、訪問営業を繰り返すなかで、もらった課題に対して技術で応える。これはこれで優れたビジネスモデルのひとつとなっていることは事実」と田中氏は人的営業の有用性を認める。しかし、そうした従来型のビジネスモデルが通用しないときには、マーケティングの力が必要となるのだ。

例えば、顧客が自社の課題に合わせて製品を選定する、あるいは課題を解決できる企業を探すとき。「『スリーエムなら課題に応えられる』ということを、問い合わせがあったタイミングやECで検索されたときなど、オンライン・オフラインを問わず、あらゆる接点で顧客に訴求しなければならない。どこに、どのようなリード(見込み客)が生まれているのかを『Oracle Eloqua』を活用して可視化するようにしている」。

“伝統的な”営業で成功している取引先であっても、顧客のニーズを把握するために営業担当が訪問できる回数には限界がある。そこでMAツールを活用し、顧客が何を課題としているのかを導き出す。MAツールは新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客とのさらなる関係性の強化にもつなげることができる。またデータを蓄積していくことで、取引先の社内の別部門や異なる担当者が抱える新たなニーズを発見することも可能だ。

グローバル統一で「Oracle Eloqua」を導入 運用ルールの共通化で業務も効率化

スリーエムのようにグローバルで統一して導入するメリットは、世界にいる自社の見込み顧客を含めたデジタルマーケティングのデータを単一のシステムに集約できることにある。

グローバルで社内の運用ルールも共通化できるだけでなく、さまざまなツールとの連携やDPI(Deep Packet Inspection)もスムーズに行える。ガバナンスに関しても「すべての顧客と『Oracle Eloqua』でコミュニケーションするようになっているので、CRMだけを目的としたツールなどを導入する必要もなくなった。顧客に月に5回しかアクセスしてはいけない、といったエンゲージメントに関する社内ルールも非常に運用しやすく、効果を感じている」。

また教育に関しても、ひとつのマニュアルを用意すれば各国で展開が可能なことや、アセットに関しても海外で作成したものをどの国でも見ることができるといったメリットがあるという。

営業とマーケティングの関係性を深めることでビジネスが加速する

スリーエムでは「セールス・アンド・マーケティング・パートナーシップ」というフレームワークを用いて、営業とマーケティングの連携を深めることに努めている。連携の理由について田中氏は「営業とマーケティング、それぞれに独自の考え方がある。多くのマーケティング担当は営業経験がなく、営業担当はそもそもマーケティングで導いたリードを信じていない。そこをすり合わせる活動をコーポレート部門が第三者的な視点で、営業とマーケティングの関係性を深めていくことでビジネスを加速させている。

マーケティングが見つけたリードをどの営業に、いつ渡すのか。インサイドセールスは、そのリードをどれくらいの期間をかけて的確か否かの判断をするのか。『セールス・アンド・マーケティング・パートナーシップ』を通じて、部門間の連携を強固にすることで『Oracle Eloqua』の素晴らしさはより発揮されていくのではないか」と話した。

また最近、スリーエムでは動画マーケティングにも力を入れている。『Oracle Eloqua』とBrightcoveの動画配信プラットフォームを連携させることで、見込み客の状況に合わせて段階ごとに適切な動画を提供し、動画をリードスコアリングの判断材料に使えるようにしている。ターゲット対し、確実にリーチしているかどうかを判別できるのも、他の動画配信との違いだ。

スリーエムでは、これらの仕組みを発展させ、デマンドジェネレーション活動をますます強化していく計画だ。

(※本記事は「Modern Cloud Day 2019」 の講演内容を基に再構成したものです。)


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