“統合されたつながり”をいかに築いていけるか
2019年6月、シカゴで開催された「Salesforce Connections」では、顧客の360度ビューの実現、顧客エンゲージメントの最新事情、マーケティングやコマースへのAI活用などをテーマに500を超えるセッションが展開され、BtoCやBtoBtoCを代表するブランドやメーカーが登壇。世界中から1万人以上ものマーケターが集った本イベントを受けて8月には東京で「Salesforce Connections To You」が開催され、両イベントともに最先端のマーケティングを実感する機会となった。
そして、「Salesforce Connections」で語られた内容を関西のマーケターに伝えることを目的として、8月27日に宣伝会議の大阪セミナールームにて「Salesforce for Marketing Osaka- 1万人が集合したマーケターの祭典 “Connections” エッセンスを大阪へ」が開催された。
初めにセールスフォース・ドットコム エバンジェリストの熊村剛輔氏が基調講演の内容を紹介。キーメッセージとして唱えられたのは、「統合された顧客エンゲージメントの新しい道を切り拓く」。
熊村氏は、「顧客と体験、企業とデータ、データとデータなど様々なものが“つながる”時代を迎えている」と説明した。今後のマーケティング戦略は、顧客を個人として捉え、いかに「個」とコミュニケーションをとれるか、多種多様な接点を用意して顧客とつながることができるかが肝になる。
同様に強調したのは、顧客は“統合されたつながり”を企業に期待しているということ。例えば、企業のサポートセンター担当者とPCからチャットでやりとりをした顧客は、モバイルからチャットにアクセスしても同一の顧客であると認識して接客してほしいといったように、“一貫したやりとり”を望んでいる。また、“過去の行動に基づいた対応”、“ニーズを理解した上での接客”の要望が高まっているというのだ。
しかし、依然として多くの企業では事業部ごとに顧客データを管理しており、データの連携が取れていない実情がある。このようなデータの分断を解消し、統合するソリューションとして、熊村氏はSalesforceが新たに開発したツール「Customer 360」も紹介した。
イベントに集ったマーケターが、何よりも求めているのは「明日から踏み出すべき次の一歩のヒント」。そこで、身近な事例を基に考えてもらおうと、Trailblazer(Salesforceを活用して革新に挑戦する人々)の大阪代表として、医薬品・健康食品・サプリメントなどの製造販売を行う森下仁丹の森清氏を招いたセッションも展開された。
森氏は「長年、新聞やラジオを起点としたコールセンターへの注文が大半を占めていたが、ECからの購入客も増えてきたことからSalesforceの活用に至った」と導入の背景を話す。
現在は、Commerce Cloud、Marketing Cloud、Service Cloudを導入し、顧客データ、購買データ、ECのアクセスデータ、お問い合わせ履歴を統合にチャレンジしている。
森氏は今後の展望として、「統合したデータをもとに、EC上でパーソナライズ化を実現したい。そして、ゆくゆくはECと実店舗を融合させたオムニチャネルの取り組みも目指す」と語った。
MA導入に失敗しないために「やってはいけない○○」
続いて行われたのが、ゴルフダイジェスト・オンライン CMOの志賀智之氏、ZENoffice 代表取締役社長の岩瀬恭裕氏と熊村氏による、「やってはいけないシリーズ 先人から学ぶ、マーケティングオートメーション(MA)導入から活用の知恵」と題したパネルディスカッション。事業会社のマーケターである志賀氏と、企業のデジタルマーケティングを支援する立場にある岩瀬氏の、それぞれの視点や経験談を交えてディスカッションが展開された。
冒頭、「やってはいけない導入目的」というテーマについて岩瀬氏は、「MA導入を成功させるには、戦略・組織・システムの3つの要素が不可欠」と述べた。続けて志賀氏は、「戦略が特に重要。販売促進のためにMAを導入すると、チラシメールを配信するだけで終わってしまう。買う前・買うとき・買った後のそれぞれでカスタマーエクスペリエンスを最適化するためには何をすべきか、その戦略を描いてからMAを導入すべき」と熱弁した。
続いて「やってはいけないテクノロジーの使い方」というテーマについて、志賀氏は「メールの配信タイミングは、送り手の都合に合わせて決める“スケジュール型”では失敗を招く。購買・Webサイト回遊などの顧客行動に合いの手を入れていく“イベントドリブン型”に変える必要がある」と話した。一方の岩瀬氏は、「費用対効果の高い施策は何か、何の指標をKPIに設定すべきかをよく考えずに施策を行ってしまうと、ライセンス費用を回収できずに頓挫してしまう」という見解を示した。
また、ゴルフダイジェスト・オンラインは「組織のつくり方」も特徴的だ。同社では、各事業部のマーケターとMAの設定・開発を担当するシステム担当者を、UX本部(CRM推進部)というひとつの部署に集約。
メリットについて、「システム担当者がいることで、マーケターと連携が取りやすく、スピーディーに実装・開発に取り掛かることができる」と志賀氏。また、岩瀬氏は「体制に比べて戦略が大きすぎると破綻する。ゴールを実現できる体制がないなら、社内外のリソースを使ってギャップを埋める必要がある。壮大な戦略にこだわりすぎず、今の組織体制でできることは何かを考えてマーケティングテクノロジーを活用するのも得策」と話した。
最後に、デジタルマーケティング活動におけるパートナー選定のポイントなどについてもディスカッションが繰り広げられ、参加したマーケターは身近なテーマについて知識を深めた。最先端のマーケティングテクノロジーが紹介された「Salesforce Connections」の様子、そしてリアルな成功・失敗談が伝えられた本イベントは、関西のマーケターにとって明日からの一歩を踏み出すきっかけとなったことだろう。
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