※本記事は2019年10月31日に行われた、宣伝会議主催のイベント「コーポレートブランディングカンファレンス Vol.3」内での講演をレポートしたものです。
120カ国以上に事業を展開し、海外売上比率が7割に迫るクボタ。グローバル化が加速する同社のコーポレートブランディングについて、コーポレート・コミュニケーション部長を務める細谷祥久氏が語った。
1890年に創業した同社のルーツは、鋳物の製造。現在は農機や建機、エンジンといった機械と、パイプシステムや水処理機器などの水・環境の主要製品を擁している。日本と北米、欧州、アジアに拠点を構え、2018年12月期の1兆8500億円という売上高の内訳では、北米の売上が日本を上回るなど急速にグローバル化が進んでいる。
創業120周年が過ぎた2012年には、「クボタ・グローバルアイデンティティ」という世界共通の経営理念や「For Earth,For Life」というブランドステートメントを制定。「食・水・環境という、人類の生存に欠かせない分野での課題解決を経営理念の中核に据えて事業を展開している」と両方の制定に関わった細谷氏は語る。
グローバルでブランド体系化へ
世界規模での事業拡大とともに、SDGs(持続可能な開発目標)を経営の羅針盤としてグローバルの方針やスローガンに一貫性を持たせた。
また、経営の中長期目標として、「グローバル・メジャー・ブランド(GMB)」を掲げ、売上や利益だけではなく「最も多くのお客さまから信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」になることを目指す。現在は、木股昌俊代表取締役社長が2018年に表明した「元気クボタの強力発信」という経営方針をもとに、統率性と一貫性を追求しながら、戦略性に富むコミュニケーション活動を展開している。
コーポレートブランディングで目指すのも、全社的かつ体系的であり、グローバルで一貫性を持たせること。重点推進課題として、
1.ブランドアイデンティティの構築
2.ブランドマネジメントの強化
3.国内ブランド強化プロジェクトの継続
4.周年事業によるコーポレートブランディング
の4点を挙げている。
1では、急速な事業のグローバル化から生まれた歪みとダブルスタンダード(二重基準)の是正を狙う。「今までは各地域や各事業が独自でマーケティングやブランディングを展開してきたことで個別最適が進み、一貫性に乏しいブランドになっていた」と細谷氏。
一例として挙げたのが、ロゴとカラーだ。30年以上にわたりコーポレートロゴとプロダクトロゴが併存。事業戦略でのプロダクトカラー(オレンジ)と、会社の象徴ともいえるコーポレートカラー(ブルー)をどのように位置づけて運用していくかなどの課題も抱えていた。現在はブランドデザインガイドラインを刷新し、ロゴの統一化を推進している。「今後もグローバルを俯瞰しながら、ブランドの体系化を目指していきたい」と語る。
2はブランド管理ルールの曖昧性、関連部門との希薄な連携性を反省しての改善だ。「問題を打破すべく、ブランドビジョンの策定を検討するほかに、法務、知財、品質保証、デザインといった関係部門と連携しながらブランド管理の方針とルールの策定を進めている」と細谷氏。さらにコーポレート・コミュニケーション部でも、これまで以上に全社的にアドバイザーとしての役割を発揮しようと、ブランドセミナーを定期的に主催している。