あなたの企業・製品・サービスは凡人です! ブランド論の教科書が与える幻想

【前回コラム】「なぜ、あなたの会社はブランドがつくれないのか? —あいまいな「定義」が引き起こす問題」はこちら

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前回のコラムでは、わかりやすいブランドの定義が間違っていると偉そうなことを書きました。いよいよ、なぜ間違っているのかについて、33年間の実務を通じて理解したことを踏まえて、“翻訳”していきます。

今回は、結論からお話しします。

なぜ、間違っているのかといえば、これらのわかりやすい定義は、
(究極の、稀有な、超優秀な=専門家が認める本物の)ブランドにおける定義だからです。

前回のコラムでブランドにおいては、言葉の省略に注意することが大切と書きました。わかりやすいブランドの定義においても、前提となる言葉が省略されていることが多く、専門家の方に悪気はないと思いますが、それを実務者を誤った方向へと導いてしまっているのです。

省略せずにいうとこうなります。

わかりやすいブランドの定義(約束とか差別化)は
(超優秀・スーパースター)ブランドの定義としては正しいが、
(ほとんどの)ブランドの定義としては間違っている、です。

わかりにくいと思いますのでブランドではなく、人間を例にして補足説明したいと思います。

以下は、「人間について」を説明しているA・B・Cです。

人間について
A:人間は必ず死ぬ。
B:人間は自転車に乗ることができる。
C:人間は、宇宙飛行士になれる。

どうでしょう?
すべて「人間についての説明」として正しい、間違いではない。

だだ、正確に表現すると、A・B・Cには省略があります。

省略した言葉を補ってみます。

A:(全ての)人間は必ず死ぬ。
B:(ほとんどの)人間は自転車に乗ることができる。
C:(すばらしい才能に恵まれた)人間は、宇宙飛行士になれる。

となります。

別の例です。

A:(100%)人間は必ず死ぬ。
B:(ほどんどの)人間は日々生活するだけのお金を稼いでいる。
C:(本当にごくわずかな)人間は、年収が10億円以上ある。

これも、「人間についての説明」では何も間違いではありません。

ただ省略して説明すると
人間は年収が10億円以上ある、となります。

この説明は、正しいと思いますか?
そんなことありえないよ!と思いますよね。

このように省略していることに気づかなければ、正しくない結論が導き出されてしまうことになります。

私はもちろん、こんな収入はないですし、そんな収入の人はまわりにもいません。

でも世界のお金持ちには、10億以円上の収入がある人は絶対にいます。

ただ、省略していることがわからない場合、「人間」の説明としては間違っているのです。

専門家は暗黙の前提として(超優秀な・スーパースター)ブランドを定義しているのですが、実務者はそれを気づかないままに使ってしまいます。

なぜなら、現実世界の常識では、省略せずに説明するならば本来は、A(100%)にあてはまる場合であるべきですし、せいぜい許されるのはB(ほとんど)です。なのに、ブランド論・ブランドの教科書ではC(きわめてまれな特殊場合)を定義として使っています。まさかCの定義とは夢にも思わない実務者は、ここで、まちがった定義を信じてしまうのも仕方のないことです。

究極のブランドのみにあてはまる定義が、差別化・約束です。

だからブランドの定義としてCを使うのは大間違い。

では、(ほとんどの)ブランドの定義とは何なのでしょうか?
すいませんが、その説明の前に、どうしてもお話ししないといけないあなたにとっては悲しい現実があります。

次ページ 「あなたのブランドは、永遠にスーパースターブランドにはなれません!」へ続く

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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