媒体社側にとっては、広告審査の基準を厳しくする必要があり、一方で広告主側も思いがけずにクリエイティブがSNSなどで炎上し、ブランド棄損につながった例も少なくない。インターネット上で広告活動を行ううえで、企業やブランドを守るためにはどのような対策を打つべきなのか。媒体社、広告主双方に対して広告審査や運用サポートなどを行うイー・ガーディアンのアカウントリレーション部 首都圏統括 佐々木雄一氏に話を聞いた。
不適切な広告表現が、媒体社も出稿企業も双方の信用を落とす
国内においても、年々拡大し続けるインターネット広告市場。広告主はもちろん、広告掲載を行う媒体社も増加していることから、個人事業主を含め、気軽に安価で広告が配信できるようになった。
その一方で、「広告出稿のハードルが低くなった分、広告に対するリテラシーが低い人も簡単に出稿できるようになり、本来ふさわしくない表現の広告も出回ってしまっている」と、イー・ガーディアンのアカウントリレーション部 首都圏統括 佐々木雄一氏は指摘する。直近では、気象庁がホームページで民間広告の掲載を始めた翌日に、法律に違反したり事実を誤認させたりするような不適切な広告が掲載されたとして、広告の掲載を取りやめるという事態も起こっている。
よくある問題が化粧品や健康食品の広告で、薬事法に違反する効果効能が謳っているものなどだ。しかし、最近は生活者の目も厳しくなり、「美白」という表現でさえ物議を醸すようになっている。ほかにも、「初回100円」と大きく書かれた広告を見て、その下に小さく「4カ月分の購入が条件」と書かれていることに気づかず商品を注文したところ、定期購入を強いられたとして裁判になったという事例もあり、似たようなクレームは後を絶たない。
法律に違反する、誤解させるような表現をするといったことは広告表現に対する意識の低さを物語っているが、そうでなくても本来意図していないところで批判が起こったり、思わぬところでブランドイメージが傷ついたりということもある。特にインターネット上で一度点いた火は燃え広がりやすく、その対処には大きな手間がかかる。
この背景には、広告を掲載する媒体社側にも問題があるという。「そもそも広告の内容が適切かをチェックする体制が整っていないところもあれば、配信量が増えた分、チェックが追い付かなくなっていたり、売上を優先させるあまり広告主の良くない意向までくみ取ってしまったりといったところもある。それが不適切な広告を助長させている」と佐々木氏は語る。
媒体社側からすれば掲載基準を厳しくしすぎると、広告主が減ってしまうという懸念はもっともだが、「長期的に見れば、媒体そのものの信用問題に関わってくる」と佐々木氏。「優良企業は広告掲載先を慎重に選ぶので、信用が落ちれば優良企業からいなくなる。今は広告量が増える一方ですが、最終的に淘汰されていくなかで、真っ先になくなるのはそういった媒体でしょう」。
最新情報をキャッチアップできる専門人材の必要性
では、不適切な広告を世に出さないために、広告主も媒体社もどのような対策をするべきなのか。
理想的なのは、チェック体制として広告審査の専門知識を持つ人材を置く、あるいは増やすことだ。しかし専門知識とは、法律だけを指すのではない。言葉の表現の仕方や文脈の中での使い方など、微妙な判断が問われるときに、適切に判断できるほどの経験も持ち合わせていなければならない。
最も難しいのは、最新情報のキャッチアップだ。「法律などで明確に禁止されていなくても、世の中的に引っかかってしまう表現がある。以前までは問題にならなくても、今の時代環境では問題になってしまうというように、世の中の基準はどんどん変化している。そこには常にアンテナを張っていなければ、対応しきれなくなっていってしまいます」。
最近、特にアンテナを張るべきなのが人種差別に関わる問題だ。人々の見方が刻々と変化するうえに、一つ表現を誤れば炎上につながってしまうものは多くある。こういったものを社会情勢も含めて適切にキャッチアップできる人材がいなければ、思わぬところでブランドを棄損してしまうという事態になりかねない。
広告表現に対する対策は、中小企業も含めて、広告出稿を行うすべての企業に求められることだ。しかし、すべての企業が専門人材を確保できるわけではない。そのようなときは、イー・ガーディアンが提供する広告審査のサポートサービスが有用だ。
高まるニーズに合わせて、広告審査のサービス体制を拡充
イー・ガーディアンは、インターネットの総合セキュリティ企業として、広告審査や入出稿などの運用サポートのほか、インターネット上に投稿されるテキストや画像、動画などの審査や監視、オンラインゲームの問い合わせ対応、サイバーセキュリティなどのサービスを提供している。
広告審査などの広告運用サポートについては、広告配信量の増加にともなって自社でプロフェッショナル人材を育成し、これまでもアウトソーシングの受託や人材派遣といった形でサービス提供を行ってきた。今年10月からはさらに対応範囲を拡大するため、短時間勤務や在宅ワーク、ダブルワークなどを希望する人材も取り入れ、広告審査のスポット依頼や短期間の運用依頼も受けられるような体制を整える。
イー・ガーディアンは広告審査を専門的にサポートする立場として、広告関連団体の研修やセミナーへの参加を行って最新情報をキャッチアップすることはもとより、日ごろからさまざまな業界の企業の広告審査を行う中で、人材一人ひとりが広く深い経験を積んでいる。審査基準は同じ業界でも企業によって大きく異なるため、自社で広告審査を行っている企業も現在の自社の水準が他社と比べてどの程度なのかを知るといった面でも、10月からのサービス体制はより活用しやすくなったと言えるだろう。
広告審査の依頼内容についても、サービス体制が拡大することにより、一社ごとの要望に合わせてより柔軟な対応ができるようになる。たとえば、不適切な表現のチェックのみをしてほしいといったことはもちろん、チェックをしたうえで適切な表現にリライトしてほしい、難易度が高いものだけリライトしてほしいといった依頼も可能だ。
イー・ガーディアンが提供する広告審査サービス
人材採用にも意欲、ますます充実したサービスへ
今後の展望として、佐々木氏は「自社のサービスを通して、インターネット広告の表現に対する意識を底上げし、誰もが安心してネット広告から商品やサービスを購買できる世の中になれば」と標榜する。
そのためには、テクノロジーがどんなに優秀になったとしても、最終的には人の手によるチェックが欠かせない。今回サービス体制を拡充するにあたって、短時間勤務や在宅ワーク、ダブルワークなどの柔軟な働き方を取り入れた。さらに個人委託契約も視野に入れており、佐々木氏は新しい人材の採用にも強い意欲を示している。
「広告審査に興味がある人はもちろん、過去に広告審査の経験がある人や事情があってフルタイムでは働けない人にもぜひお越しいただきたい。このような条件なら働けるといった相談も大歓迎。採用を通して、ますます充実したサービスを提供できればと考えています」。
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