【前回コラム】「日本の食品ロスの約5%、コンビニ廃棄解決はSDGs達成の一丁目一番地!?」はこちら
若者の店から高齢者の店へ?! コンビニが担う新たな使命
1990年のバブル真っ只中にコンビニに入社し、半年で店長になった当時の私は、日本はどんどん豊かになり続けると思っていた。30年後にこれほど経済が停滞するなんて全く想像していなかったし、一方、コンビニが国民的小売業になるなんて思いもよらなかった。
1980年から1990年にかけて、コンビニは24時間営業で深夜族の生活を後押しする業態で、「若者の店」と呼ばれていた。実はそんな時代にも、割合は少ないものの高齢者の利用はあり、私が店長をしていた時、毎日10時半にあんぱんと紙パックのコーヒーを買ってくれるおばあちゃんがいた。
時折、買った1時間後にまた買いに来る時があり、おばあちゃんに1日1回以上買い物しないように声かけをするのが、店の従業員の取り決めになっていた。2日間おばあちゃんが店に来ないと大変心配になっていたことを思い出す。
内閣府の調べ(平成29年版高齢社会白書)では、ひとり暮らしの高齢者は、2015年には男性約192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっており、看過出来ない数になっている。
来客においてもセブン-イレブンでは、2019年には50代以上の来客の構成比が47%となり、コンビニは完全に高齢者の店となっていることが分かる。コンビニで高齢者が買い物をすると、遠隔に暮らす子供や親族などのスマホに、リアルタイムに購買履歴などが送られる。そんな見守りサービスが今後行われていくのかもしれない。
高齢者に関しては、買い物のために1日700m以上は歩かないと言われており、コンビニや「まいばすけっと」などの食品ミニスーパーの狭小商圏小売業が今後支持されていくのは間違いない。
また、現在の70歳以下のシニアは会社勤めの人であれば、50歳の時にパソコンが一人一台支給された世代であり、初期スマホ世代でもあるため、ITリテラシーも高く、ネット通販が買い物の基本となっていくと考えられる。持ち帰りの中食中心に食事に関しては狭小商圏小売業での買い物となり、購買チャネルが2つを中心に消費が回っていくのだろう。
「イートイン」は地域コミュニティの場になるべし!
2018年までのコンビニでは、コンビニコーヒーが人気商品になった事もあり、イートインの充実を図っており、設置出来る店舗要件における約3分の1の店舗にまで広がった。
イートインの利用が、学生や土木業や建築業、あるいはドライバーや製造業などの限られた客層だけでなく、働く女性のひとり利用や子連れ主婦、高齢者の利用など利用客層が一挙に広がったのも大きな要因であった。イートインでは、店内飲食をしながらのコミュティの場として一定の役割を果たしていて、地域におけるコンビニの新しい役割とし、定着していた。
一転2019年になるとコンビニ各社はイートイン設置に消極的となった。10月の消費増税でイートインでの飲食が軽減税率から外れてしまった為だ。
実際には、税制を理解していない消費者も多く、店員に申告せず8%の軽減税率で食品を買い、イートインでそのまま食べる、悪気の無いイートイン脱税が散見されている。法整備が実体に即して無いのが実情で、イートインも軽減税率を速やかに適用するようにガイドラインを見直すべきだ。
コンビニのみならずスーパーのイートインもコミュニティの場として積極活用に再度舵を切れるのではないだろうか。
ローソン千駄木不忍通り店は、医療・介護に特色を持たせたケアローソンとしてリニューアルされ、少し広いイートインコーナーでは飲食の時間帯を外し、介護や栄養セミナーなどが定期的に開催され、高齢者を中心とする地域コミュニティの一翼を担っている。
イートインが軽減税率対象になれば、コンビニは利益を生み出す場所として飲食スペースの活用がなされ、近隣顧客にとっては地域の井戸端会議の場などとして役立ち、コンビニが地域密着の店となって行く事が超高齢化の日本に求められていくのかもしれない。
ローソンは1990年代には、“街のホッとステーション”や“地域一番店”、近年ではセブン-イレブンが“近くて便利”をコンセプトとしたTVCMを流している。コンビニはまさにエリアコミュニティを昔も今も目指していたのだ。
人手不足の中の店員の手間が増える事は難しいが、イートインを場として近隣住民に提供して、人が集まることで、コンビニにおいても固定客づくりの武器となるだろう。今後コンビニのイートインがよりコミュニティの場として進化していくべきだと考える。