空腹時に『吉野家を食べよう』と思われる、想起率の向上に挑戦する広報

吉野家は、1899年に創業した、日本初の和食ファーストフードチェーン店。国内での認知は、99%だという。『うまい・やすい・はやい』に拘り続け、お客様に価格以上の価値を感じていただけるように努力し続けている。

昨今では、テイクアウトのスマートフォンオーダーシステムや、デリバリーサービスの展開といった挑戦もしている。こうした同社の広報活動は、2012年の河村社長就任を契機に、注力していったという。

寺澤氏は、学生時代に友人に誘われ、吉野家でアルバイトを初めたことがきっかけで、同社に入社した。入社当初は店長を目指していたという。その後、都内で、30歳まで店長を担い、エリアマネージャーを経験。以降、2年程度づつ、本社で教育研修・人事・経営企画を担当。2018年9月から、前任者と入れ替わる形で、広報担当となった。

異動の辞令を受けた時「広報がどういう仕事なのか、よく分かっていませんでした。広報は、シビアな報道関係のメディア・マスコミ対応が多い、というイメージがあって、すごく怖い仕事ではないかと不安な気持ちもありました」という。

日々実務を行うことで、この思いは変わっていった。「前任と入れ替わって一人で広報を担うことになったため、役員に直接指導を受けながら、1000本ノックのようにOJTで広報を学んでいきました。そのうえで実際にメディアの方に会ってコミュニケーションとることで、メディアの方の取材の目的が分かるようになりました。そして、弊社の社長や役員に代わって、?野家が実現したいことをお話しすることにやり甲斐を感じました。だんだん広報の実務が楽しくなっていきました」という。

吉野家
企画本部 広報
寺澤 裕士氏

そんな寺澤氏は、19年6月に『第27期 広報担当者養成講座』を受講した。歴代の広報担当者が、本講座を受講してきたことも背中を押したという。

受講を通して期待したことは、「当時、広報活動のノウハウ・知識や実務の悩みを相談するにも、他社の広報担当などの仲間がいませんでした。そのため、講座で学ぶことはもちろん、広報担当者の仲間をつくりたいと思いました」と話す。

寺澤氏は、毎回講座の前後で他の受講者とのネットワーキングを心がけた。話をしてみると「各社の広報担当者のみなさんも、メディア対応などで大変な思いをして、取材を受けていることを知りました。私は、テレビや新聞の取材を受けていると、すぐに社長からLINEなどで、改善点のフィードバックが来きます。こうしたエピソードなど、他社の広報担当者の方と、お互いにあの取材は、今思うとこう対応していればよかったよね、という話ができました。こうした機会を通じて、これまで感じた広報活動の大変さは、自分だけが感じるものではなかったことが分かり、気持ちが楽になりました」という。

また、メディアの人物が登壇した講義では「『メディア側の気持ち』が考えられるようになり、以降、メディアの方と話す時に、自信が持てるようになりました」という。

そして、20年7月からは、テレビの2ヶ月間の密着取材も体験した。TBS『坂上&指原のつぶれない店』の10月4日のオンエアで、牛丼のたれ工場を初公開と、河村社長の出演を実現させることに心を砕いたという。

「私自身、店長やエリアマネージャーを経験してきたこともあり、視聴者だけでなく、お客様と全国の従業員に、コロナ渦でも吉野家が元気で大丈夫だと伝えたいと思いました。こうした思いで取材対応を続けることで、番組のプロデューサーの方や制作会社の方にも、吉野家が大切にしている価値観をご理解いただけました。この間、通常業務に加えて、役員と一人づつ話し・企画のチェック・スケジュール調整・工場/店舗の撮影の帯同などを行いました。大変ではありましたが、それ以上に、お客様がご覧になられたら『牛丼を食べたいな』と思ってもらえるようなオンエアにつながったことに充実感を覚えました」という。

この他にも、コロナ渦での社内広報として、河村社長の座談会「お話きかせてください」をオンライン開催し、好評を得た。概要は、『広報会議 20年8月号』に掲載している。

また、これらの攻めの広報を行うにあたって、活動時間を捻出するために、前任からついていた販売促進の窓口業務を販売促進の部門に移管するなど、広報部門の実務の選択と集中を実践したという。

そして20年11月現在の今では、KPIを意識した広報が実践できるようになってきたと話す。「吉野家は幸い、99%と非常に高い認知をいただいています。そこで、認知よりも高い目標として『今日お昼何食べようかな、吉野家行きたいな!』と思っていただく想起率を、広報活動で高めていくことに挑戦しています。定期的に行うアンケートで結果を評価し、実践を繰り返しています。これは、弊社のマーケティング部門に明確な戦略があり、広報活動を連動させていく形態をとっていることで、相乗効果が発揮されているのではないかと思います」という。

寺澤氏は「この2年で実施した広報活動は、まだ新商品やキャンペーンに偏っていると感じています。これからは、吉野家が持っているリソースやレガシーを、より上手くお客様に伝えていって、吉野家のブランド・エクイティを高めていきたいです。そうすることで、『古くからあっても新しいことに挑戦している 牛丼だけではない吉野家』として、お客様と生活者の方に、もっと身近な存在だと思ってもらえるような広報をしていきたいです。」と語ってくれた。

定期的に、広報活動が想起率に貢献しているかを確認し、以降の広報活動に活かしている
広報の考え方を体系的に習得するため、寺澤氏が受講した講座は……
「広報担当者養成講座」でした

広報業務の重要性が高まる一方で、業務の基本、また広報がカバーする分野を実務に活かせるレベルまでを学ぶ機会は少ないものです。

本講座は、広報に求められる資質、社内情報が集まる仕組み、報道関係者への対応など広報が身につけておきたい基本を全10回でマスターできるカリキュラムとなっています。

 
<次回の開催日程(オンライン開講)>

■日程
第31期 2021年2月26日(金)開催

■受講定員
60名を予定

 
詳細はこちら
 

お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:info-educ@sendenkaigi.co.jp

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