H&M×『ELLE』×Z世代起業家の特別対談! ファッション業界に見るサステナブルの自分ごと化とは?

月刊『広報会議』2021年3月号(2月1日発売)では「ニュースバリューを高める! 企画・発想」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

2015年に国連で採択されたSDGs達成目標の2030年まで10年を切った2021年。世界2位の環境汚染産業と言われるファッション業界はどのような発信を目指すのか。「サステナブル」をテーマに、企業広報、メディア、そしてZ世代の視点を聞いた。

H&M ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン
PRプロジェクトマネージャー
田中 都(たなか・みやこ)氏

大学卒業後、コーチ・ジャパン(現 タペストリー・ジャパン)に入社。販売職、広報、人事などを経験した後、2019年にH&Mジャパン入社。現在、広報部にて企業広報と社内広報を担当し、企業広報では主にサステナビリティに関する取り組みのPRを行う。

 

ハースト婦人画報社
エル グループ 編集局長
坂井 佳奈子(さかい・かなこ)氏

1998年入社。エル・ジャポン編集部にてコントリビューティング・エディター、シニア・エディター、ファッション・ディレクターを経て、2014年1 月にエル・ガール編集長、2015年4月エル コンテンツ部総編集長に就任。20 20年10月から現職。

 

Nadie 代表取締役
古城 栞(ふるじょう・しおり)氏

渋谷教育学園渋谷高校に通う現役女子高生起業家。現在3年生。2019年9月に、中高生向けの洋服レンタルサービス「放課後マネキン」を展開する「Nナディエadie」を設立。女子中高生の課題解決に応えつつ、発信を続けている。

 

消費者側の関心の高まり

——ファッション業界全体が危機感を持って走り出していますが、H&Mさんは先駆的にサステナブルな取り組みをされてきた印象です。

田中:H&Mは1990年ごろから、環境汚染、化学薬品、児童労働など業界として直面した社会問題に対応していく中で、取り組みを段階的にスタートしました。2013年にはサプライヤーリストを公開、古着回収サービスを開始したりと、今では本格的に「サステナブル」をビジネスの中に取り入れています。広報を担当していると、本当に全ての活動において「サステナビリティ」が根底にある企業なんだと実感します。発信・PRの面でいうと、ここ数年はかなりお客様目線のコミュニケーションを意識するようになりました。

▼A

オーガニックコットンやリサイクル・ポリエステルなど、サステナブルな素材を50%以上使用した製品にグリーンのタグをつけている。

「この商品はどこでできていますか」「どういうふうにつくられているのか」など、サステナブルな視点を重視するお客様が増えているんです。特に本社のあるヨーロッパではその傾向が強いため、タグに表記をしたり(A)、商品のページからどこの工場でつくられたかが分かるようにするなど様々なコミュニケーションを行っています。

一方で、日本では意識が高まってはいるものの、まだいまいち理解されていない人も多いと感じています。その両方の目線に、どう寄り添って発信できるかというところを意識しながら、日々コミュニケーションしていますね。

坂井:意識の高まりは、メディアの編集をしていても感じます。H&Mさんのように、いち早く取り組んでいらっしゃったブランドは、これまでもそのようなコミュニケーションがありましたが、それが業界全体で取り組みつつあるという気配を感じたのは2018年ぐらいじゃないでしょうか。

2017年ごろから、世界で「ファッションが環境に負荷をすごくかけているよね」という発信が徐々に出てきたんです。SNSなどでその課題感を共有し合える流れもあり、認知度としてはだんだん高まっていったのだと思います。さらに、ここ1年弱でテレビなどのマスメディアや日本の企業が「SDGs」という言葉を使い出してからは、だいぶ浸透してきたんじゃないかという印象がありますね。

田中:今日もそうですけど、メディアの方からの問い合わせも、この2、3年で急に増えてきてると感じています。メディアで取り上げられることによって、また消費者の方の意識も変わって……と、「サステナブル」への動きがどんどん加速していってる感覚がありますね。

——17歳で起業し、中高生向けのファッションサービスを展開している古城さん。企業ミッションに「サステナブルな社会に貢献」を掲げられていますが、Z世代にとってやはりサステナブルへの意識は高いのでしょうか?

古城:授業で学ぶ機会があることは大きいと思います。私自身、環境問題に興味を持ち始めたのは中学校の授業からでした。生物、英語など授業の垣根を越えて様々な教科でSDGsや環境問題について学ぶんです。

私が本格的に活動したいと思ったのは、高校2年生のとき。COP25(2019年)に合わせて授業で模擬会議を行ったんです。グループに分かれて「環境問題を自分ごと化して考えよう」と。発表は英語でしたし、とても大変でしたが、人に教えられるだけじゃなくて、自分で調べて、発表して、その上で質問やディスカッションもしなきゃいけない……そのレベルまで自分の知識を持ち上げて、「自分ごと化」して考える機会があったことがすごく大きかったですね。

坂井:「自分ごと化」というのは、私がELLEをつくる上でも特に意識している点です。先ほども話したように、社会が「サステナブル」に興味を持ち始めたのは、本当にここ最近の出来事。特に日本では、読者に「コンテンツに興味を持ってもらう」「自分ごと化してもらう」ことがとても重要だと感じています。

例えばELLEの読者に対しては、サステナブルに対して前向きなメッセージを出している海外のセレブリティたちの活動を徹底的に掘り下げる。そしてその事実を発信するだけじゃなく、ライフスタイルや、彼女たちが着ているものなど、読者の生活にも関わる情報を混ぜ込むことで「自分ごと化」を促しています。

そのひとつ、2015年2月号のエマ・ワトソンの特集は、ファッション誌としてはとてもインパクトのある記事だったんじゃないかと思っています(B)。女優であり、ファッショニスタであるエマ・ワトソンが、社会課題に向かって本気で世界にメッセージを出している視点を、きちんと紹介することで、読者の「サステナブル」への意識を高めることができたと感じています。

▼B
2015年2月号「ELLEJAPON」では、国連でフェミニズムに関して歴史に残るスピーチをしたエマ・ワトソンを特集。スピーチにかけた想いとエマの人生に迫った。

田中:繊維商社・豊島さんが2019年に全国の15歳~49歳の男女1089人を対象に行った調査ですが、環境・社会に配慮したファッションを「取り入れたい」と回答した人は70%以上いるのに対し、自分が購入するときに選ぶポイントとして、「価格」「デザイン」などの中で「環境とか社会に配慮されている」ことを選んだ人は約5%。そのギャップが現実なのだと思います。興味はあるけれども、実際それを取り入れるまでには至っていないというのが、大多数なのではないでしょうか。

▼C

多くのZ世代が活用しているSNSを通じ、「#ファッションでアクション」キャンペーンを実施。

私たちもサステナブルな活動の発信は長年行っているんですが、坂井さんがおっしゃった通り、事実だけを伝えてもやっぱり響かない。環境問題の話ってどうしても難しいと思われがちなんです。どうやったら共感してもらい、「自分ごと」として身近に考えてもらえるかが重要だと思います。例えばH&Mでは2019年、SNSで「あなたがやってみたいファッションを通したサステナブルのアクションは何ですか?」という問いかけをしました(C)

「服を捨てずにリサイクルする」「リメイクする」「正しい洗濯方法を取り入れて長く着る」「サステナブルな素材でつくられた商品を選ぶ」などの選択肢を提示して、その中からやってみたいのはどれですか? と皆さんに問いかける形です。その選択肢を見て、「こういうことをするだけでも、環境に配慮するサステナブルのアクションになるんだ」ということを知ってもらう。どんどん発信をすればいいっていうわけではなく、バランスを意識しながらやっていますね。

自分の目で見極めるZ世代

——中高生の間では実際、サステナブルへの意識は高まっているのでしょうか?

本記事の続きは月刊『広報会議』2021年3月号(2月1日発売)に掲載しています。

 

広報会議2021年3月号

 

【巻頭特集】
ニュースバリューを高める! 企画・発想
話題になるPRの切り口は?

・OPINION 安斎勇樹(ミミクリデザイン CEO/『問いのデザイン』著者)
・特別対談 H&M広報×ELLE編集長×女子高生起業家 座談会
・GUIDE 鈴木将司(全日本SEO協会 代表理事)
・特別対談 『わたしの家政夫ナギサさん』脚本家×味の素冷凍食品SNS担当者
・INTERVIEW 米川宝(テレビ朝日『家事ヤロウ!!!』プロデューサー)
・CASE Hacobu/弥生
・特別対談 ファンケル広報×『素敵なあの人』編集長×ライフシフト社CEO 座談会

【特集2】
共感を集める
「言葉」の開発

CASE1 パナソニック「ROOMLESS PAPA」
CASE2 マテル・インターナショナル「#おもちゃに性別いるのかな」
CASE3 京都きもの友禅「あなたのハタチに、 『また来年ね』なんてないから。」
GUIDE メディアに聞いた!2021年注目キーワード
毎日新聞/東洋経済オンライン
新R25/週刊ダイヤモンド
など

 

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