*本記事は『別冊 販促コンペ 公式・企画ガイドブック』(宣伝会議)からの転載です。
*本稿は「第13回販促コンペ」の開催に際し、掲載した記事です。
【回答者】
プラチナム
吉柳さおり(きりゅう・さおり)氏
ベクトルグループ取締役副社長、プラチナム代表取締役。大学在学中にPR会社ベクトルに入社し創業に参画。2002年にベクトル取締役に就任。2004年にPR事業会社プラチナムを設立し代表取締役に就任。PR文化が日本の広告業界に根付いていない時代から啓蒙・実施に従事し、PRドリブンで社会性のあるクリエイティブ、コーポレートブランディング、マーケティングコミュニケーションを多く担当。受賞多数。
Q 購入者/消費者の「インサイト」が分かりません。
A インサイトとは、ずばり消費者の〈ツボ〉です。
プランナーをマッサージ師に例えて説明しましょう。左肩が痛いお客さんは、マッサージ師に「左肩を揉んでほしい」と頼みます。しかし、マッサージ師はダイレクトに左肩を揉むのではなく、左肩の痛みに効くツボを全身から探し、そこをグッと押すことで左肩の痛みを解消する。さらに身体全体のバランスを整えて解消しようとするなら、そのツボはひとつではないかもしれない。
お客さん、すなわち消費者本人が気づいていないツボがターゲットインサイトであり、ツボを押して「その手があったか」と言わせるのがプランナーの役目です。ツボを見つけるには、ターゲットはもちろん、ターゲット以外の消費者にも目を向けることが大切。これまで女性をターゲットにしていた商品でも、実は男性需要があるかもしれません。
Q コンシューマー視点で企画を見るには?
A ターゲットになりきって1日を送ってみて。
私が実践しているのは、ターゲットになりきって1日を送ってみる〈自分カスタマージャーニー〉です。例えば、「共働きの忙しいママ」をターゲットとした商品の企画を立てる場合。朝起きて、子どもの世話と家事をバタバタと済ませ、子どもを保育園に送って……と、ターゲットの1日の流れをすべて実際にやってみるのです。
すると、ターゲットには電社内の広告を目にする余裕がないのではないか、小さな子どもを連れながらスーパーでじっくり商品を選ぶ時間などないのではないか、であれば一瞬でアピールするなり、その前から指名してもらうことが最も重要だ……といったことに実感が伴います。大切なのは、想像を巡らすのではなく、実際にやるということ。行動も思考もターゲットになりきるからこそ、ターゲットとの接点がどこにあるか、が分かるはずです。
Q 企画が表面的、と言われてしまいます。
A 課題の抽出・検証が重要です。
本質的な強さのある企画を立てるには、Q1でお伝えしたターゲットのインサイトに加え、Q2でお伝えした、本当にターゲットの生活を捉えられているかどうか、が重要になります。「テレビCMなどの空中戦でブランディングしてブランド価値は上がっている一方、量販店の売り場に赴いて、販売員の生の声を聞いみると、全然違う課題感があった」–こうしたことはよくあります。
また反対に、デジタルマーケティングや売り場は徹底してきたが、「その商品は社会課題とどのようにかかわり、どんな方法で課題を解決するのか」という〈社会的なインサイト〉が欠けていて、実はブランド課題だったということもあります。
表面的ではなく、本質的な企画にするためには、真の課題を徹底的に洗い出し、その課題解決につながった企画になっているかどうか、課題の抽出・検証が非常に重要です。