グラフィック以外の領域にも拡張
1984年に設立されたスパイスは、東京・赤坂を拠点にグループ全体で約190人の社員が所属する制作会社だ。4月から本社を移転し、これまで点在していた部門やグループをひとつの拠点に集結。リモートワークも取り入れつつ、新たな環境でスタートを切ったばかりだ。
グラフィックデザインを中心に制作するプロダクションというイメージが強かった同社だが、この10年ほどで事業内容が多角化しつつある。以前から強みとするグラフィックの仕事で培ったデザイン力、企画力をベースに、Webサイトなどのインタラクティブデザインや動画、3DCG、モーションキャプチャ機器の輸入販売や収録スタジオの運営など、新たな手法も組み合わせてトータルでクライアントの課題を解決する体制が整ってきた。
今では案件の半数以上がグラフィックのみで完結せず、他の領域との連携によって生み出されている。これに伴い、人員体制もグラフィックデザイナーだけでなく、動画を編集するエディターやコンポジター、3DCGクリエイター、エンジニアなど幅広い。豊富な実績を持つベテランはもちろんのこと若手も多数活躍している。
「固定のチーム制ではなく、プロジェクトごとに最適な人員を組み替えるチーム制をとっています。最初に相談を受けるのがどの領域の仕事であっても、プロジェクトごとに最適な人員配置を可能としました。たとえばグラフィックデザイナーがキャラクターを描いて、3DCGとモーションキャプチャでデザインを取り込み、エンジニアが制御する。職域を超えて、こういった連携ができる総合力が強みです」と話すのは、主にインタラクティブ領域を統括する執行役員 プロデューサー 桝田貴史さんだ。
現場のスタッフも変化を実感している。たとえばグラフィックデザイナーでもバナーやブランドサイト、動画などの企画も含めてトータルで提案する機会が増えてきた。アートディレクター 金澤芽依さんは「デザイナーの役割は単一の制作物の提案で終わりではなく、さまざまな媒体で展開するキービジュアルや企画、アイデアなどを考える仕事だと捉えています」と説明する。
逆に、Webデザイナーから「ブランドサイトで商品のストーリーを展開するにあたり、メインのグラフィックを考えてほしい」と相談を受けることも。「直接、お客さまからデザインのディテールに気づいていただけたり、“スパイスにトータルで頼んでよかった”と言われたりすることが一番うれしいです」(デザイナー 宮下恵梨子さん)。
インタラクティブ領域ではキャンペーンサイトやLPの制作、採用サイトの企画など広く実績があるが、特に増えているのがWebサイトの案件から派生して生じる動画の相談だ。「Instagram、TwitterなどのSNS動画からメディア向け発表会で使用する動画、あるいはトレインチャンネルやデジタルサイネージなど新たな広告媒体や店頭で流す動画など、幅広く対応しています」(コンポジター 海野瑠奈さん)。
動画制作では実写に限らず、アニメーションや3DCGを用いた表現も得意とする。CGクリエイター 喜藤健介さんは海野さんら動画のチームと連携するほか、「VTuberを運用したい」という依頼も多い。「モーションキャプチャを使った自治体のVTuber案件や、人気アーティストのバーチャルライブなどエンターテインメントコンテンツの制作で多数の実績があります」(喜藤さん)。
赤坂にはスパイスが自前でモーションキャプチャの収録スタジオを構えており、企業のプロモーション案件での利用も増えてきた。「スタジオ収録サービスのほか、2001年からモーションキャプチャ機器の輸入販売を手がけています。問い合わせも多く、新しいプロモーションの手法として浸透しているのを実感します」(モーションキャプチャ事業部 井草海里さん)。
部署の垣根を越えた柔軟な体制に
スパイスはいち早くリモートワークを導入。状況に応じて出社したりしている。自然と部署間の垣根がなくなり、出社した際もフラットな交流が生まれている。案件ごとに柔軟にチームを組みやすくなり、社内のシナジーを生み出していく考えだ。
「100名以上のクリエイターが縦横無尽に組み合わされば、ひとつの仕事から2次展開、3次展開が次々と生まれるはず。グラフィック、Web、動画、3DCGなどそれぞれに特化した人材が一体となり、クライアントの一歩先のベストなアイデアを生み出せるクリエイティブエージェンシーとして進化を続けていきたいです」(桝田さん)。
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