デジタルの強みを“課題”ではなく“武器”として扱えるように
ユーザー、そしてクライアント企業にとってもデジタル広告の品質を考える際、多く語られるもののひとつに「ブランドセーフティ」の問題があります。広告が不適切なサイト上に掲載されることで、ブランドの毀損、さらには消費者の広告体験を低下させてしまうリスクが生まれます。
オフライン広告では「どこに」「どのように」広告が出稿されているかコントロールできていたのに、デジタルになった途端にわからなくなってしまう。その問題を解決するために登場したのがアドベリフィケーションです。人力でセーフティリスト、ブラックリストをつくり配信先を管理することも可能ですが、アドベリフィケ-ションツールの導入により、不適切なサイトへの広告配信を事前にブロックすることができます。
ただ、これはあくまで不適切な「枠」への配信を避けられるということ。デジタル広告におけるアドエクスペリエンスの議論では「枠」に焦点が当たりがちですが、問題の本質はそこではなく、広告の内容そのものではないかと個人的に考えています。そして、この広告の「内容」についての議論はなぜか置いてきぼりになってしまっている気がするのです。
例えばテレビCMを制作する際、クリエイターたちは当然、テレビCMというメディアの特性を考慮してテレビのための広告を制作します。
それでは、デジタル広告についてはどうでしょう。まだ、別の媒体で使った広告クリエイティブを流用して「デジタル広告」として出稿しているケースも多いのではないでしょうか。ネット広告費がマスの広告費を超えた以上、デジタルがこれから成長していくことは必至。デジタルだから広告クリエイティブの内容を疎かにしてよいわけではなく、これから大勢の目に触れることになるからこそ、クリエイティブの質に目を向けるべきではないでしょうか。
また、デジタル広告の強みとして挙げられるのは、24時間いつでも自社の広告がどこかで出稿でき、見てくれる誰かがいること。だからこそ、広告がどこに出ていてどう見られているかのチェックは常に必要です。
例えば、あるキャンペーンを実施しているとき、その広告が上手く表示されなかったという課題があったとします。1カ月後のレポートを見てその課題に気づき、次の対策を練るのでは遅すぎます。やはりリアルタイムで対応できなければデジタル広告の強みを存分に発揮した広告効果や広告体験は得られないでしょう。
つまり、広告主企業がデジタル広告の強みを生かすために大事なのはリアルタイムでPDCAを回せる環境をつくっておくこと。せっかくのデジタル広告のメリットを“課題”にするのではなく“武器”として扱えるようにすることが必要です。
DoubleVerify Japan
日本法人代表
武田 隆氏