「組市松紋」を応用、3Dプリンタで立体化
東京2020組織委員会は6月3日、東京2020大会の表彰式で使用する表彰台や楽曲、メダルトレイなどに関するアイテムをお披露目した。そのうち、表彰台のデザインを担当したのが東京2020エンブレムを手がけた野老朝雄氏だ。
エンブレムのコンセプトである「組市松紋」を応用したパターンを立体化しているこの表彰台。20センチ四方に3Dプリンティングされたパネルを6個並べ、1辺あたり1メートル20センチのユニットで構成されている。
中央部(金メダリスト)はこのユニットを2段重ねており、上段を外すと金・銀・銅が同じ高さに。オリンピックだけでなくパラリンピックでも同じ表彰台を使用できるよう配慮されており、団体競技の場合はユニットを追加して横に延ばすことで展開できるよう計画されている。なお、使用時の新型コロナウイルスの感染対策については現在検討がなされている。
表彰台の素材は、国内で回収した使用済みプラスチックと海洋プラスチックを一部活用している。P&Gジャパンでは「みんなの表彰台プロジェクト」として、2019年6月から9カ月間かけて24.5トンの使い捨てプラスチックを店頭や小学校などから回収。これらをもとに98台の表彰台が完成した。
野老氏はエンブレムが採用された当初から、組市松紋と同じ幾何学により形成されたパターンを使った表彰台の構想があった。組織委からの正式なオファーとともにサステナビリティの課題に取り組む方針を踏まえ、IOCのワールドワイドオリンピックパートナーであるP&Gが回収したプラスチックを活用することになった。
具体的にデザインや造形化に取り組んだのは2019年のこと。3Dプリンティングを専門とする慶應義塾大学環境情報学部の田中浩也教授が3Dプリンティングの統括を行い、同研究室出身の平本知樹氏(wip代表)がプロジェクトマネージャー兼ディレクターとして実作業を進めていった。
野老氏は「制作するからにはオープンソースで、あくまで学問として取り組むべき」と考えていたという。「1964年の東京五輪を知る世代としては、当時の丹下健三さんの建築に代表されるようにオリンピックから世界をリードするようなレガシーを生み出していくことが理想。日本が世界をリードする先端的な国ではなくなった今、新たなテクノロジーや表現の可能性を提示したいという思いもありました」。