【調査背景】
生活者は自分の購入するブランドを意識的・無意識的にスクリーニングにかけ、最終的に自分の購入するブランドの集合体を保持しています。
これはエボークトセット(想起集合)と呼ばれ、生活者はエボークトセットの中からその場面に合わせ、最も効用の期待できるブランドを購買して行くと考えられています。
生活者が場面にあわせて色々なエボークトセットを持っていると考えると、この場面を特定しそれに合わせたブランディングを行うことでブランドの独自性を強化することも可能と考えられますが、そのような考え方は成立するでしょうか。
今回は歯磨き粉カテゴリーを取り上げ、期待する効果という一般的には独自性を発揮しづらいとも考えられる機能面に着目し実際に検証しました。
調査内容:歯磨き粉に期待する効果でどのブランドを想起するか聴取
調査対象:歯磨き粉を自分で購入し、ほぼ毎日使用している人
サンプルサイズは1,200名
歯磨き粉に期待する効果を1名あたり最大3つまで回答
続いて期待する効果ごとに思い浮かべるブランドを回答
調査期間:2021年4月13日~4月14日
機能的価値でも想起されるブランドに違い
今回取り上げる期待する効果について見てみると、期待する効果でも最も多かった“虫歯予防”では「クリニカ」「GUM」「クリアクリーン」という順位ですが、“歯周病予防”では「GUM」「シュミテクト」「システマ」となり、上位に上がるブランドが変動しています。
口臭予防やホワイトニングでも上位に挙がるブランドは必ずしも同じという訳ではなく、機能面であってもブランドが想起される割合に違いがあるようです。
上位3ブランドは多くの機能で想起されている
“歯磨き粉”で想起されるブランドのランキングは以下です。
このランキングは様々な場面を総合した結果としての順位になっていると考えられます。
先ほど、期待する効果ごとに上位に挙がるブランドに違いを見ることが出来ましたが、総合的な結果と照らし合わせて見るとある傾向が見て取れます。
総合ランキングで上位のブランドほど各機能面でも上位に想起されており、具体的にはGUM、クリニカ、クリアクリーンでその結果を確認できます。
他と比べて特徴のある機能を有する場合想起されやすく、推奨もされやすい
では先ほど総合ランキングの知名集合で4位であった、シュミテクトはどうでしょうか。
歯周病予防やホワイトニングでは想起されやすそうなポジションですが、知名集合TOP3のブランドほどは各機能面で上位に入っている印象はありません。
また想起集合や推奨集合でより上位にあがるのはなぜでしょう。
この点シュミテクトには知覚過敏という独自性を見ることができ、この特徴が浸透した結果、想起・推奨されやすくなっていると考えることができます。
まとめ
今回の調査結果からは場面やシーンにより出来上がるエボークトセットは異なり、ブランドごとに独自のイメージが形成されている可能性が示唆されました。
また総合ランキングで上位のブランドほど多くの場面やシーン(今回は期待する効果)で思い浮かべられやすいという点も明らかになりました。
これは多くのブランド想起の入口(カテゴリーエントリーポイント)を持っているブランドが結果的に想起されやすく、カテゴリー(今回は歯磨き粉カテゴリー)全体で見ても上位に入ることの説明要因になると考えられます。
カテゴリー上位のブランドはカテゴリーエントリーポイントを網羅することがブランド戦略を考える上で中心になるかもしれません。
一方で、ブランド上位に入ることが難しいブランドはどのような行動が考えられるでしょうか。
これは先ほどのシュミテクトの例が参考になります。
つまり、まずは1つ強い想起ポイントを作り、その後他の想起ポイントでも思い浮かべられるように拡張して行くことでブランドの成長につながると考えられるのです。
株式会社ネオマーケティング
マーケティンググループ
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