アートディレクター 中島英樹氏が、2月3日午前に動脈硬化による脳梗塞のため逝去した。享年62歳。葬儀は家族のみで執り行われた。
中島氏は、1961年埼玉生まれ。イギリスのグラフィックデザイナー ピーター・サヴィルのデザインに衝撃を受け、デザインの道へ進む。清水正己デザイン事務所、ロッキング・オンを経て、1995年に中島デザインを設立。1990~2018年に雑誌『Cut』のアートディレクターを務めた他、『ROCKIN’ON JAPAN』『DUNE』などの雑誌、国内外のアーティスト・フォトグラファーの作品集のエディトリアルデザイン、吉本ばななの書籍の装丁デザイン、坂本龍一、中村一義らのCDジャケットデザイン、SHU UEMURAのパッケージデザインなどを手がけている。
これまでにニューヨーク ADC金賞5回、銀賞7回。東京ADC賞3回、東京TDCグランプリ、ニューヨークTDC最高賞、講談社出版文化賞ブックデザイン賞、シカゴ・アテナイオン賞、香港ポスター・ビエンナーレ銀賞ほか多数受賞している。
また国内ほか、イギリス、ドイツ、広州、マカオ、上海など海外でも個展を多数開催。作品は、ニューヨークのMoMAに80点強、パリ装飾美術館に50点強、フランス国立図書館に40点強、チューリッヒ美術館へ20点強、ポンピドーセンター、リヨン印刷博物館、ロサンゼルス州立美術館、他に多数の美術館にパーマネントコレクションされている。
宣伝会議アートディレクター養成講座でも長らくエディトリアルデザインの講師として、後進の育成に尽力した。
雑誌、書籍、CDなどのデザインにおいて、実験的とも言えるさまざまな試みに挑んできた中島氏。かつて『ブレーン』のインタビューで、中島氏は次のように話している。
「自分では邪道でありたいと思いますね。邪道といっても、めちゃくちゃわかっている邪道ですけど。今『王道』と言われるデザインも、その始まりは邪道であったはずなんです。それが時間を超え、伝承と発展をし、『王道』と言うフォルムが出来上がった。ただ王道ばかりやっていると、パイオニアにはなれない。だから『新しいフォルムを作らなければならない』といつも思っているんです。それは僕の思うクリエイティブなんですが、今ここには決してない、でも10年後には当たり前にあるフォルムを作りたい。新しいフォルムは邪道の中からしか生まれないし、未来の王道は今の邪道の中にしかないと思うんです」
2021年7月には、作品集『Hideki Nakajima: Made in Japan』を刊行。昨年より自ら編集長を務めるビジュアル雑誌創刊に向けて準備をしているところだった。訃報に際し、国内外の多くのデザイン関係者から悲しみの声が寄せられている。