「ユニークデータ」を活用した次世代の広告検証とその効率化

自社Webサイトにターゲットが好みそうなコンテンツを掲載し、訪問、視聴してもらって認知度や好意度を高めたい――。少なからず目にする施策だが、果たして購買にはどれだけ寄与しているのか。実店舗での購買データの取得は一部企業に限られる上、広告やコンテンツに接触した人と購入者の同一性の担保がこれまでの課題だった。

さらには、オンライン広告のプラットフォーマーなどが発行する、いわゆる「サードパーティ(第三者)クッキー)」による、ネットユーザーのトラッキング(追跡)に対する規制も進展しつつある。広告接触者と自社Webサイトの訪問者が同一人物かどうかの判定も今後、難しくなることが予想されている。

こうした分断の、「つなぎ役」としての役割を果たしているのが、CCCマーケティングの「ユニークデータ」だ。

実施したのは、某飲料メーカーが、自社Webサイトで音楽アーティストのライブ映像をリアルタイム配信するというもの。Webサイトにはオンライン広告などを用いて集客を図った。

広告配信にはCCCマーケティングが持つ約7000万人の「ユニークデータ」を活用。配信先は、対象となったブランドの過去の購買者や、音楽ライブに好んで参加したり、視聴したりする層。「ユニークデータ」の購買トランザクションデータなどに基づいて、グーグルやヤフーの広告ネットワークに広告を配信した。

さらに購買行動も同じく「ユニークデータ」を用い、(1)Webサイトに訪れたがライブ映像は視聴しなかった (2)ライブ映像を視聴した の2つのグループに分類して分析した。

結果、企画実施前の購買率と比較し、企画実施後の購買率が増加したのは、(1)の「Webサイトには訪れたが、視聴しなかった」層だった。これは(2)のユーザーが飲料メーカーにとってのライトユーザーが多かったのが起因している。

CCCマーケティング 新規事業ディビジョン メディアエージェンシーユニット ユニット長の荒木裕次氏は同事例について、「未視聴者層のほうは、過去の購買者などが多く含まれたため、Webサイトを訪問しただけでブランドが再想起され、購買につながったのではないか」とみる。一方、「ライブ視聴者層は、そのアーティストのファンなどが多く、購買経験のない人が少なくなったため、(1)に比べて購買の押し上げが弱かったと考えられる」とした。

タレントやアーティストを起用するケースで、そのファンが多く集まってしまい、本来アピールしたかった商品やサービスについての印象が弱く、広告効果につながらないことはままある。ターゲットに楽しんでもらうためのコンテンツと、広告効果との両立をどう図るかの検討や、次善の策につなげる上でも、接触から購買までを一貫して分析することが重要だ。

しかし、こうしたリソースを横断してのトラッキングが、サードパーティクッキーの排除でこれまでの仕組みではほぼ不可能になろうとしている。現時点でもWeb上なら大手ITプラットフォーマーによるID管理で、パソコンやスマートフォンと言った機器横断、ブラウザ横断でユーザートラッキングは可能だが、特にオフライン購買までの間には大きな分断がある。

解決策のひとつとして注目されるのが「データクリーンルーム」という取り組みだ。特定個人データを排除して匿名化した上で、プラットフォーマーや通信事業者、購買データを持つ企業などがデータを持ち寄り、広告接触から来店、購買といった一連の消費者の行動を把握しようという狙いがある。

「CCCマーケティングでも、データクリーンルームの取り組みは進めている。特に『ユニークデータ』は、いわゆるデモグラフィック属性のほか、どんなブランドを購入しているのかの量や頻度、メディア、コンテンツ接触からの興味関心事項といった、その人のライフスタイルデータも充実しているので、対象店舗を中心に数キロメートル以内に住み、1年以内に来店経験がなく……といった細かなセグメントを設定することができる」(荒木氏)

実際に店舗を訪れたかは、GPSデータからの推計や、その店舗でTカードを用いて支払いを行ったか、などで、最終的な利用動向を把握できるという仕組みだ。

テレビ局からも期待の目

オンラインメディアに限らず、こうしたデータ活用に期待の目を向けているのが、テレビ局だ。TBSテレビはCCCマーケティングをはじめとした外部企業のデータを活用したスポット販売を伸ばしている。21年度は販売額ベースで前年度比5倍以上に伸長、顧客企業は30社超を数えた。

「テレビは、マスへのリーチ力が最大の強みなのは確か。しかし、それだけというのは誤解だ」と話すのは、TBSテレビ スポットプロデュース部長の伊藤健二氏。

「データを基にターゲットに最適な枠を抽出し、ピンポイントに購入することで、ターゲティングも十分効率的に行えるのがテレビCM。デジタル広告と同程度の予算規模でも、成果を出すことができる」(伊藤氏)

一方、従来のテレビ局が、視聴率や性別・世代別のデータにのみ頼ってきたことは、「反省点と考える必要がある」と指摘する。

高級自動車のCMを例に挙げるなら、従来はいわゆるM2、M3といった層が多いタイムやスポットを提案するにとどまっていた。しかし、CCCマーケティングの『ユニークデータ』と掛け合わせると、一定以上の年収や外国車の所有者が、より多く含まれる枠を見つけ出すことができる。単純な視聴率の多寡だけでなく、見かけ上の視聴率は低くても、含有率とかけ合わせると、ほかの番組よりも大きく露出できる枠がある。

 

 
「テレビも、現在の広告主が設定する主要指標に応じて、課題解決型である必要がある。昨今、インターネット配信も含めて豊富なコンテンツが提供される中、放送局として制作しているコンテンツの価値もさることながら、オンエアしているテレビCMの価値、効果、役割についても改めて考え、提案していきたい」(伊藤氏)

ファーストパーティ、どう活用

テレビ視聴率と一口に言っても、自社の商品・サービスへのロイヤルティの高低で違いが出てくる。CCCマーケティング 新規事業ディビジョンマネージャーの橋本直久氏は、「たとえば、半ば常套句化しているパレートの法則、いわゆる『ニッパチの法則』なども、先入観を持たず疑っていくべき」と指摘する。

 

 
具体的に示したのは、ポテトチップス菓子の購買データだ。「ユニークデータ」の購買トランザクションデータから、およそ2対8になるよう、購買頻度で分類し、ロイヤル層とライト層と分類。「ニッパチ」に基づくなら、2割のロイヤル層が全体の売上の8割を占めることになるが、実際は6割。さらに性別で見ると、さらに変化することもわかった。

さらにテレビ視聴率をそれぞれの層で見てみると、3%から7%の視聴率差が出る時間帯があることがわかった。

「売上に占める割合で考えれば、ロイヤルもライトも同様に重視しなくてはならない。しかし、同じコミュニケーションでは効果が低くなってしまう。それぞれがよく見ている番組も異なるし、そのほかの行動データとかけ合わせて見えてくるライフスタイルや嗜好性の違いもあるからだ。メディアプランニング時点でここまで把握できていれば、本質的な施策の検討がしやすい」(橋本氏)

自社で持つデータをどう活用すればいいか、課題として抱えている企業も少なくない。橋本氏は、「自社のファーストパーティはどんな人たちなのかを考えることから」と話す。

「先に述べたポテトチップスの例でも、購買データを単に性別や年齢別で見るだけでなく、その構成を見る。顧客群がどんな性質を持ったグループなのか、ということ。一定以上の規模があれば、人口構成と比較することで、特定の性別や年齢が有意に高い、あるいは低い、ということがわかる」(橋本氏)

たとえば日本の人口で20〜24歳女性は比率でいうと4.7%程度。自社のユーザーの構成比でこれより一定程度、多ければ、当該世代からの支持を受けていると見ることができる。逆に考えれば、少ないところは開拓の余地があるということだ。

「自社で持つデータだけで見ていても、なかなかわかることは少ない。大切なのは、単位や基準を統一して、ほかのさまざまなデータとつなげて分析すること」(橋本氏)

自社ユーザーの人物像をより明らかにすることが、効率の良いプロモーションの第一歩となる。 

※ユニークデータとは、7000万以上のシングルID、年間35億件以上の購買トランザクション、20万店舗のネットワークで扱われる60億種類の商品データ、数千項目からなる顧客DNAのペルソナデータ、オフライン・オンライン上の移動・行動データやメディア接触データ、またCCCMKグループオリジナルのエンハンスデータなどを指します。



お問い合わせ
CCCマーケティング株式会社
新規事業Division テレビマーケティングUnit
担当:江本、風間、山下、長島
Email:ccmktvdataplan@ccc.co.jp

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