東急、全路線の電力を再エネ由来に 環境ビジョンと具体策を同時に示す

環境・社会課題に対する自社の取り組みを、幅広いステークホルダーへ向けて発信するにあたり、「思わず伝えたくなる」情報として発表するには、どのような要素が必要なのでしょうか。『広報会議』2022年6月号では、広報担当者に身近な「プレスリリースでの情報発信」に焦点を当てレポート。本稿ではその一部をダイジェストでお届けします。

環境ビジョンを策定し、自社の方針を社外に示すことは、脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩となる。だが、ビジョンよりも、それに紐づく具体事例があったほうが、ステークホルダーの納得感が高まることは明らかだ。画になる施策があれば、メディアもより取り上げやすくなる。

タイミングを計り、関心を最大化

2022年3月28日、東急は環境系のリリースを3本同時に配信した。ひとつ目は環境ビジョン策定の公表。2つ目は、日本初の事例の発表。環境ビジョンの具体策として、全路線の運行にかかる電力を、実質的にCO2排出量がゼロとなる再生可能エネルギー由来の電力に4月1日から置き換えると伝えた。これは東急電鉄との連名リリースだ。3つ目は、鉄道業界初の事例。日本政策投資銀行から対話型サステナビリティ・リンク・ローンでの資金調達を決定したというものだ。

3つの発表に連動性を持たせるため、各リリースに補足説明や、リリースのリンクをつけるなどしている。発表後すぐ「全路線で再エネ電力100% 東急が国内初」(日経新聞 3月29日)などと、新聞、テレビ、ウェブ媒体が取り上げており、同社が脱炭素を推進していることや、電力の見直しによって削減できるCO2量なども報じられた。

見えない変化を伝わりやすく

「環境ビジョン策定のリリースのみでは、具体事例がなく取り上げていただくことが難しいと考え、3つのリリースを同時配信することでメディアの関心を引き、最大化できたらと考えました。鉄道の電力については、再生可能エネルギー由来に切り替えても一般の方は変化を感じ取ることができません。メディア露出は、鉄道利用者への認知にも大きく貢献したと思います」と東急 広報企画担当 兼 東急電鉄 広報CS課の奥野裕真氏は話す。

2022年3月28日に発表した3つの環境系リリース。配信後、脱炭素社会の実現に向け、全国の鉄道会社で初めての取り組みがなされていることがメディアで報じられた。

続きは『広報会議』2022年6月号で。記事化につながるSDGsの取り組みやプレスリリース戦略についてレポートしています。

広報会議2022年6月号

 
【特集1】
どうする?気候変動リスク対応
サステナビリティ発信強化

 
「脱炭素」座談会
企業×メディア×投資家の視点で語る
脱炭素に関する企業発信の潮流とは
 
GUIDE1 広報が求められる役割は
カーボンニュートラル経営実現のステップ
伊原彩乃(ボストン コンサルティング グループ プロジェクトリーダー)
 
GUIDE2 自分ごと化に広報は
人と社会を動かす「共感の深度」の見つけ方
畑中翔太(dea代表、クリエイティブディレクター/プロデューサー)
 
OPINION
脱炭素に真に取り組んでいるのか
判断の分かれ目、メディアはどう見る
・「Business Insider Japan」
・『繊研新聞』
・『WWDJAPAN』
・『化学工業日報』
・『環境ビジネス』
 
【特集2】環境ビジョンの浸透・成果の発信
「脱炭素」×自社の “らしさ”を結び付けた事例

 
CASE1 住友林業
脱炭素への本気度を示すのと同時に
事業領域の認知拡大を図る
 
CASE2 三菱UFJフィナンシャル・グループ
宣言に加え、アライアンスにも加盟
進める、ステークホルダーへの浸透施策
 
CASE3 ニチバン
環境対応に関する全社発信を、周年を機に強化
セロテープ®介し、他の企業の発信の“場”の創出にも
 
CASE4 石井造園
地域の”らしさ”を体現する企業を目指し
周囲の共感得る理念と合言葉を策定
 
COLUMN
Z世代に響くサステナブル発信とは
牧島夢加(博報堂 ミライの事業室)
 
【特集3】記事化につながるSDGsの取り組み
「プレスリリース」戦略

 
Q&A
社会課題の解決につながる取り組みのリリース
記者の注目を高める方法は
西林祐美(共同通信PRワイヤー)
 
CASE1 東急
日本初、全路線の電力を再エネ由来に
環境ビジョンと具体策を同時に示す
 
CASE2 UCC
カーボンニュートラルなコーヒー
背景にある技術、官民連携を発信
 
CASE3 千葉商科大学
自然エネルギー100%の大学を目指し
達成状況を視覚的にも伝わりやすく
 
など
 


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