右脳で直感的に投資に触れてほしい
投資の世界は初心者にとって複雑で難解なもの。株価チャートの読み方やPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)など学ぶことが多数ある。株価の特定の値動きを指すチャートパターンもそのひとつ。ヘッドアンドショルダーズ、ダブルトップ、下降ウェッジ、シンメトリカル・トライアングルなど、覚えるのも一苦労だ。
この複雑な株価チャートを元に、AIで音楽を生成できないか――そんな発想から生まれたのが、IG証券が4月に公開した「IG STOCK MUSIC」だ。対象となるのは約7000の米国株・欧州株(一部)。AppleやAmazonなどの人気銘柄からIPO(新規上場)銘柄まで、それぞれの株価チャートから楽曲が生成される。
同サイトは2014年からIG証券の広告などを手がけてきたビーコン コミュニケーションズ グループクリエイティブディレクターの武井慶茂氏が企画した。
ヒントとなったのは、音楽制作ソフトでの楽曲制作。その画面表示が株価のチャートを横にしたような形状であることから、「株価の動きを音楽で表現できないか」と考えた。「株価はオープンソースであり、企業の業績や歴史を映し出す鏡でもある。そのデータが音楽になったら、もっと右脳で直感的に投資へ興味を持ってもらえるのでは、と提案しました」(武井氏)。
株価と曲調が連動するアルゴリズム
技術面ではBirdmanのプロデューサー 高橋慎二氏に相談し、株価の上昇や下落とサウンドが連動する独自のアルゴリズムを約半年かけて開発。チャートのパターンごとにLo-fi HIPHOP、ニュージャズ、ダブステップなどの曲調と紐付け、オリジナルのサウンドが生成される仕組みとした。
「AIとはいえ血が通っていない音の羅列にならないようこだわりました。同じような値動きに対し複数のパターンの音源データを用意しているので、似通ったチャートでも全く違う曲調を楽しむことができる。また、株価が大暴落しても、絶望に満ちた音楽になりすぎないようにといった企業への配慮もしています」(武井氏)。Kan Sano氏をはじめ4組のプロミュージシャンの参加により、曲の完成度を高めている。
さらにサイト全体を見渡すと目を引くのが、楽曲のジャケットとなるアートワーク。文字情報から画像を自動生成するソフトウェアを用いている。そこに、ジャケットのようなフレーミングや株式市場における銘柄識別コードであるティッカーシンボル(AppleならAAPL、AmazonならAMZNなど)を楽曲タイトルのように配置することで、多彩なバリエーションをもたせている。
インターフェースや楽曲のリコメンド構成も音楽配信サイトそのもの。「メジャー銘柄特集」「投資ビギナー向けの1曲」「上昇への期待が高まる1曲」などのメニューを用意し、中には「アップルが初代『iPhone』を発表した日に奏でた曲」といった切り口も。音楽を楽しみながら自然と株価の動きを体感できるようにした。
今後は多言語対応を進め、6月には英語版も公開予定。曲のジャンルも広く音楽ファンを取り込むため、レゲエやロックなどを加える準備を進めている。
「海外の投資家は銘柄への愛着が強い方も多いので、音楽を聴いてもらって活発な議論が起きるのが楽しみです。また、パーマネントなサービスとして機能して、他の証券会社との差別化ポイントにもなればと思います。将来的には株価の未来予測などにも活用していけたら面白いですね」(武井氏)。
スタッフリスト
- 企画制作
- ビーコンコミュニケーションズ+Birdman+LADER PRODUCTION+データアーティスト
- グループCD+企画+C
- 武井慶茂
- CD+デジタルディレクター
- 築地ROY良
- 企画+C+デジタルディレクター
- 辻野史俊
- 企画+Pr
- 新井智士、高橋慎二
- 企画+デジタルディレクター
- 武山英敏
- 企画+C
- 斎藤大樹
- 企画+AD
- 今野雅人、星川淳哉
- D
- 李周炯
- PM
- 鴨志田麻美
- TD
- コバヤシタケル
- 音楽
- 原田亮、中村義響
- AIエンジニア
- 植村智明、鈴木初実
- FE
- 朝生直樹
- バックエンドエンジニア
- 高橋幸一
- サーバサイドエンジニア
- 河津佳章
- 演奏協力
- Kan Sano、やすだちひろ、Shin Sakiura、BROCKBEATS
- AE
- 鈴木正浩、河村篤