ビックカメラは9月、専門性を高めた販売員を配置する「くらし応援マイスター」制度を導入する。来店者の満足度を高め、顧客維持を図る。5年後をめどに店頭販売員の約30%を「マイスター」とする。現在の販売員数は約3200人。
店舗組織におけるキャリアの幅を広げる。従来は新入社員―販売員を経て、売り場の責任者、副店長、店長といった店幹部と昇格するのが一般的だった。マイスター制度では、専門性の高い販売員を、責任者や店幹部と同水準の職級とする。経営戦略の重点項目に掲げる、従業員の能力の再開発=リスキリングの一環。
家電やオーディオなどの「総合マイスター」と、カメラやスポーツなどの「専門マイスター」を設ける。認定には、一定以上の年次業績考課のほか、家電アドバイザーなどの資格を取得することが条件。現時点で店頭販売業務を担う従業員が対象で、立候補制とした。年齢制限はない。
ビックカメラの物品販売事業は19年8月期に8801億4400万円と直近8年度で最多の売上高となったが、20年、21年は新型コロナの影響もあって低調。今後回復が見込まれる訪日観光客向けの売上以外にも、顧客単価増や非家電製品の販売増といった底上げが必要な状況だ。
経産省の商業動態統計では、家電大型専門店の1店舗あたり商品販売額は、2014年度から21年度にかけてほぼ横ばい。一方、インターネット販売は活況で、生活家電やAV機器、PC・周辺機器といった家電製品は、2020年のEC市場規模が前年比28.8%増の2兆3489億円となった。EC化率は前年比4.7ポイント増の37.45%で、書籍や映像・音楽ソフトに次いで2番めに高い。
高機能化が進むほか、価格の高い家電製品は、事前に情報を得て購入を検討する「探索財」としての性質が強い。販売員の専門性を高めて来店者の需要に応える。
「専門的な販売員がお客さまに適切かつ、一歩進んだ提案を行うことで、お客さまの満足度が向上し、当社のファン、販売員のファンになっていただくことによって、企業価値も上がると考えている」(ビックカメラ)
ビックカメラはメーカーから派遣される販売員約2000人の受け入れを終える方針も示している。