かんべ笑会
コピーライター/コミュニケーションプランナー/クリエイティブディレクター
神戸海知代氏
TCC会員、九州ADC会員、JAPAN MENSA会員。大広、広瀬広告事務所、ADKを経てかんべ笑会を開業。クライアント直の案件も、広告代理店や制作会社と連携する案件も、たのしく向きあう毎日。ヤマサ昆布つゆ「ふたりの関係が冷めたと思ったら まず、台所で火をつける。」シリーズで日本雑誌広告協会賞、経済産業大臣賞を受賞。ぐいパン「パンツは、よごれるためにある。」、ニオイラボ ペット「ニオイは、生きてる証拠です。」などを制作。TCC新人賞、消費者のためになった広告コンクール、グッドデザイン賞、ACC賞などを体験。著書に共著『名作コピーの時間』(宣伝会議)。
コトバのチカラを究める3つのキーワード
こんにちは、かんべ笑会の神戸海知代です。「オンデマンド版コピーライティング実践講座」の添削講師を担当しています。
コピーを添削するたびに、いろいろな学びがあります。受講生のみなさんの課題は、わたしがとり組んでいる課題でもあります。一生をかけてとり組んでいくのかもしれません。
これらの課題に一人でも多くの人が向きあったら、もっと面白い世の中になるにちがいない。そうなると毎日が楽しくなるだろうなあと想像しながら、ほんの一部ですが学んだことをここで共有するつもりです。
ワークショップに参加するつもりで、書いたり確かめたりしながら読んでいただけるとうれしいです。コトバのチカラをさまざまな角度から究めるために「共感」「選択」「パラダイムシフト」の3つをキーワードに探っていきます。
キーワードその1:「共感」
コピーライティングにおいて最も大切でムズカシイこと、それは共感を獲得できるかどうかだとよく言われます。確かにそうかも。そもそもコピーを書いている本人がそのブランドや商品に共感できない状態で、読んでいる人の共感を呼ぶコピーなんて書けませんよね。考えるのもツラそうです。
実際に自身の体験から共感できるポイントを探しだすことができればいいけれど、共感できる体験がないために困ってしまったという声もよく聴きます。
でも、ちょっと待った! 体験しなければ共感できない、となると広告の役割にまるごと矛盾していると思いませんか。体験したことがない人に共感を抱いて体験してもらうのが目的ですから。
手もとにある国語辞典で「共感」の意味を調べてみると「他人と同じような感情(考え)になること。」と書かれています。相手の感情や考えに寄り添うこと。体験を共有するだけではもったいない。そこにコピーライティングの醍醐味があります。
共感≠体験
以前、宣伝会議コピーライター養成講座基礎コース福岡教室の講師をする機会があり、九州アートディレクターズクラブ(以下「九州ADC」という)とコラボし、九州ADCアワード2021の開催にあたって「アワードを盛りあげるためのキャッチコピー」を課題にしました。
受講者はコピーライティングを学びにきていて、アートディレクターズクラブを知らないばかりか興味のない人がほとんどです。さぁ、どんな視点からコピーを書くか? 検索したり、質問したり、取材したり、なんとかして身近な体験を集めます。
わたしも体験が少ないと不安で、オリエンを受けるやいなやブランドや商品を確かめずにはいられなくなる体質です。知れば知るほど当事者として語りやすいですし、さらには、中の人になりきって書くこともあります。
それでも、クライアントほどクライアントが手がけるブランドや商品のことを知っている存在はありませんよね。九州ADC会員自身が持っている体験にはかないません。情報の質や量でクライアントを超えることができないのであれば、どうすればいいだろう。そこで考えます、わたしならどう誘われたいか?と。天の声になったつもりでわたしを誘うように書いてみます。
共感ってなに?
たとえば九州ADCアワードのことを知っていても知らなくても、その事実を受け入れた瞬間すでに、わたしたちは関係している。つながっています。受講者のみなさんのコピーを見てみると、その想いがよく伝わります。どう誘われたいか? がひとつひとつのコピーに表れています(どんなコピーかは「九州ADC × 宣伝会議CAC」で検索すると確かめることができます)。
提出されたコピーの例:
「リアルなら、やけどするぜ。」
「さしみには、さしみ醤油。九州には、九州ADC。」
「ふつう、好き、好き、大好き。」
接点がないところから始まって、事実を受け入れ、コピーライティングを通してゆるがない信頼関係を生みだそうとしている体温と汗を感じます。共感とは、相手の感情や考えを理解し、肯定すること。もちろん肯定するといっても、自分の価値観と違う相手の価値観にただ同意しているだけではありません。価値観を理解してありのままを受け入れる、その先で得られるのが「共感」です。
共感力をきたえる
共感力を自然にきたえる方法の1つとして、キッズにもオトナにも反応がよかったワークショップをご紹介します。それは、主語を入れかえて表現する練習です。身近な人とペアを組んで、互いに「わたしのキャッチコピー」を書いて楽しみながら確かめる方法です。自分自身ではなくペアの相手が書くところに意味があります。まず、次の3つを書きます。
① あなたの名前
名前にこめられている気もちを確かめながら書く。
② あなたの好きなもの1つ
あなた自身の好きなところ、あなたが夢中なもの。
③ あなたが得意なこと1つ
あなたが持っている必殺技、人から頼まれること。
1つに絞って書くのは、人生経験の多いオトナだけでなくキッズもムズカシイと話していました。書きだした3つのコトバを使って、ペアの相手に自己紹介します。ペアの相手はできるかぎり話を聞く、きく、聴く。聴いた中でいちばん気になったコトバをもとにペアの相手をひと言で表わすキャッチコピーを書きます。相手が使っていたコトバをそのまま活かしてもOK、変換してもOK。そのようにして互いに書いたコピーを確かめあいます。
実際にワークショップをしてみて気づいたことですが、互いに確かめあっていたコピーは、そのどれもが①②③で出されていたコトバではなく、ペアの相手のコトバに生まれ変わっていました。自分の中にあるコトバだけでなく、相手が引きだしたコトバが自分を伝える表現になる。相手の中に潜んでいるホンネをできるだけ引きだして、まんなかにある価値を見つけて表現する。
「あ!これがわたしだったのか」と気づいて自分自身の価値が信じられる。それが、コトバのチカラであり、コピーの可能性だと思います。共感力をきたえるには、たとえば上記のワークショップのような「筋トレ」ならぬ「言トレ」を続けることが大切です。
「オンデマンド版コピーライティング実践講座」では、主語をサービスや商品、ターゲット、時代や社会に置きかえて What to say を導きだし、共感力のあるコピーを生みだすためのトレーニングも行っています。
次回のアドタイ出張講座では、コトバのチカラを究めるキーワードその2「選択」についてお届けします。
神戸氏が添削講師を務めるのが「オンデマンド版コピーライティング実践講座」
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特徴その1
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