タノシナル
代表取締役
福島 ツトム氏
社員のコミュニケーションの充実やモチベーション向上、組織の一体感の醸成を目的に行われる社内イベント。だが、コロナ禍も相まって、参加率や満足度などの面で苦労している企業も多い。タノシナル代表取締役の福島ツトム氏は、社内イベントの成功に重要なのは「脱ロジカル発想」だという。
「脱ロジカル発想」とは順序立てて頭で考えるロジカルシンキングに対し、既成概念や常識にとらわれず、多角的な視点で物事を捉えて、新しい発想を生み出す思考法。しかし、同社が複数の社内イベントを検証した結果「経営陣のプレゼンは約8割が状況説明で、肝心な思いや伝えたいことはたったの2割しかない」という企業が多かった。福島氏は「ロジカルなプレゼンは説明になりがち。頭で理解できても行動変容につながりづらい。『脱ロジカル発想』でプレゼンや展開を考え、社員のココロを揺さぶり、『聞きたくなる』『観たくなる』状態をつくるのが、イベント成功への重要な入り口」と話す。
予測できない施策で動かす
福島氏が挙げた成功事例は2つだ。
1つ目が乃村工藝社。同社の新中期経営計画発表会はこれまで参加率が低いことがひとつの課題だった。そこでタノシナルは告知動画と「これまでの新中期経営計画発表会はつまらない!」というキャッチフレーズを制作。会社側が「つまらないもの」だと認める斬新さに、「今回は何か違う」と興味を持つ社員が増加。自然と告知動画の視聴回数は伸びていき、結果として発表会はほとんどの社員が参加、「何が起こるのだろう?」と興味を持ってスタートすることができたため、発表会自体も過去最高の理解度をマーク。7000件を超える投稿が寄せられ、様々な意見やアイデアが集まった。福島氏は「頭での理解ではなく、社員がワクワクするなどココロが動いたことが行動変容につながった」と話した。
大企業の空気を変えたトーク
2つ目に挙げたのは、住友生命の社内オンラインイベント「ブランド・ライブ2022」。約4万3000人の職員が働く同社が抱えていたのは「本社」と「現場」の距離。本社と現場の営業職員には、お互いの理解を深める機会がなか
った。これを払拭するため「初の試み」を実施。「スミセイFLAT TALK」というトークイベントだ。事前に、本社、支部、役職、年次の枠を超えて、意見や疑問を自由に語ってもらった。現場から本音が飛び出す一方、本社の苦労もわかったり……、ここまでフラットなトークは前例のないこと。その様子を「ブランド・ライブ2022」で全職員に配信したことで「会社は現場の声を聞こうとしている」という姿を示すことができ、職員の意識を大きく変化させることに成功した。
最後に福島氏は、「脱ロジカル発想で『どうしたら社員のココロを揺さぶることができるのか』という視点を持つことが、社員の行動変容にもつながります。企業の課題、今後の構想、経営陣のタイプ、社員の傾向などについて分析し企画することも、イベント成功を左右するポイントになると思います」と締めくくった。
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