成長の鍵は外に目を向けることから―『クロスカルチャー・マーケティング』より

「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、当社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。

今回は、12月6日に発売した新刊『クロスカルチャー・マーケティング 日本から世界中の顧客をつかむ方法』(作野善教著)の「はじめに」の一部を紹介します。

定価:2,200円(本体2,000円+税) 四六判 268ページ
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質の高い日本製品が十分に評価されていない?

「日本のいいモノを世界の消費者に」

日本で生まれ育ち、社会人になってからは人生の半分以上の月日をアメリカとオーストラリアで生活しています。この言葉は私の人生のモットーといっても過言ではありません。

1990年代後半にアメリカに留学していたころと比べると、今では通信手段も格段に増え、海外と日本の間で特に不便を感じることなく仕事をこなせる便利な世の中になりました。海外における日本製品のトレンドや物流も大きく変化しました。

海外で生活をしていても、日本の製品を購入することやおいしい日本食を堪能することはずいぶん容易、むしろあたりまえになりました。結果、海外に住む日本人として「バイリンガル消費者」になりました。そのときの気分によって、日本食、エスニック料理、西洋料理を選んで食べます。

日本語のみで表記された製品の特性を理解したうえで購入し使用する日本企業のブランドや製品は、外国製のブランドや製品と比べても使いやすかったり、信用できたり、製品としても優れているものが多く、一般的に英語のみで表記されている外国のブランドや製品をモノと用途によって「こういうモノは日本製を、ああいうモノは外国製で」という感じで使いわけるようにもなりました。

このように要領よく使いわける「バイリンガル消費者」は、日本製と外国製のいいとこどりができて、とても便利に、多少大げさに言うならば「ずいぶん人生が豊かになった」と感じています。

では、私と同じようにまわりの外国人消費者が日本の製品やブランドと現地の製品、ブランドを使いわけているものでしょうか? 残念ながら器用に使いわけている外国人消費者はあまり見たことはありません。

日本語がたいしてできないけれど日本に住んでいる、日本へ旅行や出張で行ったことがある、日本に興味を持っている外国人の友人たちは、日本の文具や化粧品、食べ物などすべて日本語で表記されたパッケージを私に見せながら、「使い方を説明してよ」「何が入っているの?」といった質問を投げかけてきます。

一般的に日本企業の製品は、コンセプト、品質、機能、どれをとっても優れているモノが多いにもかかわらず、グローバル市場において、その特性が理解されにくい、もしくは評価されがたいのはなぜでしょうか?

その答えはシンプルで、ほとんどの企業が日本人のみをターゲットにしたマーケティングをしているからなのです。

多様性のあるチームで、多様な消費者をとらえる

もしそのような日本企業が、最初から外国人による購買の可能性も考慮したうえでマーケティングをしていればどうなるでしょうか? 私はこれこそが、会社のサイズにかかわらず日本企業が明日からでも取り組むべき点だと考えています。

本書では、まず、日本とアメリカ、オーストラリアのグローバル市場で起業、マーケティングに取り組んできた私の経験をもとに、日本と海外におけるマーケティングのとらえ方の違いと、実務的なノウハウを紹介したいと思います。

事業立ち上げ
新規商品開発
組織づくり
リーダーシップのとり方
顧客分析方法
セグメンテーション(区別)
プランニング
クリエイティブ開発
海外パートナーとの仕事の進め方

などです。

特に多民族国家であるオーストラリアの現場から、日本の製品・サービスをルーツ・文化が異なる人たちへどのように価値のあるものとして伝えていくのか、クロスカルチャーな視点で、日本人及び日系企業が海外、国内において多様性に富んだチームで、多様な消費者を対象に、マーケティングを展開する際の重要なポイントをまとめていきます。

興味さえ持っていただければ、どなたに読んでいただいてもありがたいのですが、特に以下のような皆さんを念頭にこの本を執筆しました。

1.日本国内の市場縮小に直面し、市場開拓において次の一手を迫られている日本企業の経営幹部、企画営業職、マーケター

2.少子化、人口減少の中、日本経済の維持、訪日旅行客誘客、地域活性化という課題に取り組む政治家、政府組織、地方自治体の幹部または企画職、マーケター

3.スタートアップ、ベンチャーで日本のみならず世界の市場に挑戦しようとしているチャレンジャー

4.いつか世界を舞台に仕事で挑戦したいと夢を抱くビジネスパーソン、学生

5.外国人ビジネスパーソン(外国人の上司、部下、パートナー、ベンダーなど)とのコミュニケーションにヒントがほしいビジネスパーソン

「外」への市場開拓は避けて通れない

国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口(平成29年推計)報告書」によると、日本の人口は、2053年には1億人を切り、2100年には6000万人程度まで減少すると言われています。

現在の人口1億2000万人強から、日本の人口が減ることは何十年も前から当然わかっていたことですが、つまり日本が直面している高齢化社会と少子化の末には、なんと半分の市場規模になることになります。

では、人口が半減したときに日本は現在の半分に値する国内市場規模を保つことができるのでしょうか?

失われた30年と呼ばれる1990年代から30年間の可処分所得や物価指数、最低賃金の動向を見ると、あまり楽観的には考えられません。

日本企業がこれから近い将来、内需による消費の質や量が減少するとわかっているのであれば、今から日本人ではない消費者や国外の市場を狙って、企業としての新成長路線を模索するということは、もはや避けられない選択肢なのです。

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作野 善教 (さくの・よしのり)
doq(ドック)創業者・グループマネージングディレクター

シドニーのマーケティングカンパニーdoq創業者・グループマネージングディレクター。兵庫県芦屋市出身。2001年に外資系広告代理店ビーコンコミュニケーションズ入社。2005年に渡米し、米系広告代理店レオ・バーネットのシカゴ本社でAPACおよび欧米市場向けマーケティング立案を経験。その後オーストラリアに拠点を移し、2009年シドニーにてdoqを創業。異なる文化と背景を持つ多様性に富んだチームとともに、20年で50社以上の越境マーケティング戦略立案を手がける。2001年立命館大学経営学部卒。2008年シカゴ大学ニューアントレプレナーズプログラム修了。2011年ニューサウスウェールズ大学AGSMにてMBAを取得。日本発ブランドを世界中の消費者に訴求する「クロスカルチャー・マーケティング」の重要性を唱える。


 


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