※本記事は、2022年12月28日発売の『販促会議』2023年2月号 の転載記事です。
電通メディア
イノベーションラボ
主任研究員
天野 彬氏
2022年最も注目された生活者の情報行動が「タイパ(タイムパフォーマンス)」であることに異論はないでしょう。若年層を中心にタイパを重視したメディア接触・コンテンツ視聴が増えているといった論調は既に定着していますし、年末に発表された三省堂の「今年の新語2022」では大賞を獲得し、2022年の日経MJヒット商品番付では東の横綱が「コスパ&タイパ」でした。
これは生活者の持つ時間が有限である一方で、流通する情報量は増大し続け、そのギャップは広がり続けていることに起因します。したがって、今後もタイパを重視する流れが止まることはないでしょう。
情報行動モデル「ALSAS」
筆者は最新著『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる─ショートムービー時代のSNSマーケティング─』(2022年)において、情報行動モデル「ALSAS」を提示しました。AIDMAやAISASはよく知られたモデルですが、タイパを求める現代人は自分で情報を探すのではなくAIに探してもらうことが常態化し、情報との出会いをアルゴリズムが担うようになっていると考えられます。
TVCMのように誰もが同じ情報を受け取るAIDMAは受動態、知りたいことを自ら検索する(ググる〜タグるに至るまで)AISASは能動態であるのに対して、自分が触れたコンテンツ・気に入ったコンテンツの履歴をもとに機械が「これ好きでしょ」とお勧めしてくれるハイブリッドなあり方は、まさに中動態に他なりません(図1)。中動態については哲学者の國分功一郎氏がここ数年の著作の中で詳述していますが、AIやアルゴリズムが重要性を増す時代のアクチュアルな考察だと感じています。
このALSASモデルに当てはまるかたちで、私たちの購買行動に影響を及ぼしているのが「TikTok売れ」と言えるでしょう。それはどんな機序で起こるのでしょうか?
「TikTok売れ」から導かれる法則
例えば ①誰もが知る長年の飲料ブランドが、突如「飲むと痩せる」ダイエット効果に注目が集まり、TikTokを起点にTwitterの美容垢などにも話題が広がって若年層の間で再ヒットした事例。あるいは ②コロナ禍でメイク商品の売り上げが落ち込む中で、トレンドに敏感な若年層による「マスクをしていてもメイクを楽しみたい」というニーズの高まりに応えたリップ商品が、TikTokのハッシュタグチャレンジ&ブランドエフェクトを中心に話題化し、UGC(特に使ってみた感想を伝えるレビュー動画など)が大量に生まれた事例。
どちらも話題になり始めたタイミング──つまり、バズの前兆の段階をAIがつかみ、それを興味を持ちそうな人々に届けたことで話題量が膨らんでいったわけです。
……本記事の続きは、『販促会議』2023年2月号 で読むことができます。
月刊『販促会議』2023年2月号
【巻頭特集】
2023年は情報接点を制する
購買の瞬間を捉える集客・プロモーションとは
■OPINION
ZMOT時代はSMOTの疑似体験世界
「認識的価値」「社会的価値」を情報接点で制する
安野将央(マクロミル)
あらゆる接点が購買チャンスに
デジタル販促別に見る「買物行動」が起きる瞬間
垂水友紀(博報堂買物研究所)
情報行動モデル「ALSAS」から読み解く
SNSトレンドに見る新たなモノの売れ方とは?
天野 彬(電通メディアイノベーションラボ)
Z世代のパルス型消費と好感認知
3つの直感センサー
Honest Strange Multifaceted
山口夕依(マーケティングプランナー/音楽プロデューサー)
■INTERVIEW
健康系商品のイメージを塗り替える
新コンセプトが受け入れられた理由とは
日清食品
化粧品を実際に試せるPOPUPで認知拡大
購入前の商品体験の重要性を実感
銀座ステファニー化粧品
“伴走型”プログラムを新機能として実装
顧客との継続的なコミュニケーションを生み出す
オルビス
国内初のトライアル「RE.UNIQLO STUDIO」
服の循環が共感を呼ぶユニクロの新サービス
ファーストリテイリング
【特集2】
必要なのは体験の最適化
ユーザー目線の「ECサイト」チェックポイント
■OPINION
即コンバージョンに至らなくても、良質な顧客体験が生み出す
ECサイトの効果
南茂理恵(フラクタ)
「読まれない」を前提に書くことが重要!
ECサイトの使いやすさに直結するUXライティングとは
宮崎直人(Paidy)
■INTERVIEW
実店舗とECサイトのサービスレベルを均一に
リニューアルで目指す、顧客体験価値の向上
ユナイテッドアローズ
「顧客に合わせて、変幻自在に売り方を変えていく」
ECサイトリニューアルで新たに目指すもの
亀田製菓
ECを毎日来たくなる楽しいサイトに
リソース活用で充実したコンテンツを提供
カタログハウス
■調査レポート
ユーザーが「使いやすい」と感じるECサイトにするための留意点
ECサイト運用者が抱える、サイト運用時のCRMについての課題感
■TOPICS
エートゥジェイ
半年で平均420%の売上アップ
ECで売れ続ける為の機能からマーケティング施策までワンストップサポート
■シリーズ 販促の基本
消費者の欲しい情報、商品を届ける
購買データPOS、ID-POSを学ぶ
越尾由紀(True Data)
■METHOD
(秘)公開 これがプロの企画書だ!
カルビー
「じゃがりこ あげりこ クリエイターコラボパッケージ」の企画書
谷澤渓介(カルビー)