全国261万台の大規模サンプルが複合的なセグメント分析を実現
映像機器メーカーであるTVS REGZAのクラウド事業センターでは、テレビ視聴データの収集・調査を実施しており、2014年より視聴データ分析サービス「TimeOnAnalytics」を提供している。
石川賢一氏は、「ユーザーから視聴ログの利用許諾を取得したコネクテッドTV(CTV)を通して、放送・ネット動画・HDMI・録画視聴など、すべてを統合して視聴状況が把握できるため、『TimeOn Analytics』のデータに関心を持つ企業が増えているように感じます」と話す。
「TimeOn Analytics」は、映像機器メーカーが取得するからこそ実現する大規模なサンプル数という強みにより、本来セグメントすると数字が出にくい番組やBSの番組まで分析が可能。要素を複合したセグメントにも耐えられ、さらに営業地域ごとに市区町村までデータを分解できる。
「テレビ視聴に関する調査は“調査サンプル依頼”により視聴者と個別に契約する方法が一般的です。ただ、それだとサンプル数に限りがあるため、複数の条件をかけ合わせてデータ分析を行う場合に、十分なサンプル数があるとは限りません。レグザの視聴ログは、調査サンプル依頼に比べて100倍ほどの規模でデータが集まります」(石川氏)。
同社がデータを収集するサンプル数は2023年1月時点で全国約261万台(一部内訳:関東エリア100万台超、中京エリア22万台、近畿エリア35万台)にのぼるという。
「当社が提供するデータは、テレビの内部動作として記録された“視聴した”ファクトベースのログデータであり、記憶想起や推計の調査とは異なります。地上波だけでなく、BS・CS全局においても同じ粒度でデータ提供が可能。また、YouTube、NetflixやABEMAなどのOTTサービスの利用秒数・時刻のログも取れるためYouTubeをよく使う人が地上波で見ている番組や時間帯なども知ることができます」と石川氏。
【図1】のように取得できる多彩なデータが、十分なサンプル数で揃っているため、例えば「30代男性で、地上波の番組AとYouTubeの両方を見ていて、なおかつ車好き」といった、様々な軸を複合的に組み合わせたセグメントも可能になるという。さらに、テレビデバイスの郵便番号を使用することで、市区町村単位で視聴の傾向を分析することもできる。
広告主企業や放送局で急速に広まる視聴ログデータ活用
データの活用事例について石川氏は「広告主企業では、市区町村の営業管理単位で販売実績とCMアクチャルの相関を見るなど、効果測定に視聴データが使われています。また、『Eテレの子ども向け番組をよく見ている』といったファクトから子育て世帯のテレビをターゲットにCMを出稿するという工夫をした使い方や、録画視聴でもCMがスキップされず同じ値段で倍のリーチが取れる番組が見つかる例もあります。放送局では、例えば特定の地域にフォーカスした番組が、該当エリアの方々にどれぐらい視聴されているのかを、365日、翌朝に更新されるダッシュボードで分析し、データドリブンな番組づくりが行われるようになっています」と話す。
さらに、同社のデータは1秒単位での計測が可能なため、テレビCM1本ごとの視聴数や秒単位での視聴増減も把握することができ、さらには番組内や前後で、「どのCMチャンスがいいのか?」「CMチャンス内の順番はどこがいいのか?」という点までわかるという。
これらの精度の高いデータが評価され、現在テレビのキー局および地方局向け視聴ログ提供において、同社は圧倒的なシェアを誇っている。
また、最小粒度のデータである「個票」サービスは広告会社に提供する機会が多いと言い、より詳しいデータを自社で分析したいというニーズにも対応している。
リアルタイム視聴も録画視聴もシングルソースで計測が可能
TVS REGZAは、18年前から視聴ログデータの取得・活用に取り組んできた。その実績と知見の深さにより、他のテレビメーカーが提供する視聴ログデータと比較しても、同社のデータには特徴があると石川氏は話す。
「リアルタイム視聴と録画視聴を機器1台のログとしてシングルソースで計測しています。これにより、ドラマの1話目をリアルタイム視聴し、2話目を録画視聴した場合でも“同一テレビでの視聴”としてカウントされます。タイム・スポット分析にも最適なリアルタイムと録画視聴をシングルソースで追えるのは、当社データの強みです」。
また、他社では高価格帯のテレビのみから視聴データを取得しているケースがあるが、同社では3万円台の機種から高価格帯まで広くデータを取得している。これにより「視聴者サンプルの偏りが少ない」と石川氏は説明する。
自由度が増すバイイングに向け 精緻なメディアプランニングを
CTVの普及に伴う取得データの多様化は、メディアバイイングの現場にも影響を与えている。以前よりもテレビCM枠の購入における柔軟性が高まっており、広告主にとっては、精緻なメディアプランを組んでも、従来よりもそのプランに沿ったバイイングが可能になってきているという。このような変化により、自社商品との親和性が高い広告枠を割り出す「ターゲット視聴率」が、この先ますます重要になっていくと石川氏は予想する。
「バイイングの自由度が増すことで、広告主はより効果的な広告枠を購入できるようになります。まさに、データドリブンだからこそ変わっていく世界。私たちTVS REGZAは、広告主がそれぞれのブランドに合うメディアプランニングを行えるよう、データ提供や分析によるサポートを行っていきます」と話した。
TVS REGZA
クラウド事業センター ビジネスソリューショングループ グループ長
石川賢一氏
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