「ReX」に基づき多様性にも配慮
楽天グループの全社横断組織「クリエイティブデザイン戦略部(CRD)」の業務内容は、プロダクトやサービスのUI/UX、ブランドロゴやカラーなどのアセットの制作・管理など多岐にわたる。グループ横断での品質向上を目的とした、ガイドライン策定なども担ってきた。「グループの統一感やブランドメッセージを伝えるためのラストワンマイルといえる組織。グループが持つ顧客接点ごとにブランディングの企画から実際のクリエイティブ制作までワンストップで行います」(ジェネラルマネージャー鍋嶋靖弘さん)。
CRD にはデザイナーやプランナー、ディレクターが約60 人在籍する一方、70 以上のサービスを運営する各事業部にもデザイナーなどが所属する。よってグループ全体でデザインに携わる人材は1000 人を超え、CRDは各事業のデザイナーらと協働しながら楽天ブランドに適したクリエイティブのアセットを築く役割を果たしている。
CRD の活動の根底に常にあるのが、「ReX(Rakuten Experience)」という考え方だ。IDEO の監修のもと、2017 年に構築した。「企業のクレドやバリューのように、楽天ブランドが提供する体験価値を言語化したものです。各クリエイターが表現に迷ったときに立ち返ることができる指針となり、ブランドの強度を高める役割を果たしています」(鍋嶋さん)。
2022 年度のグッドデザイン賞を受賞した独自のイラストデザインシステム「Rakuten Illustration System」(2022 年2 月発表)も、ReX の考えのもと誕生した。グループから発信する社内外向け制作物、Web サイト、アプリで使用するイラストを瞬時に生成でき、頭や胴体、下半身、付属品などのパーツや色を入れ替えるだけで30万通り以上の組み合わせが可能だ。クラウドツール上で構築し、誰でも一貫性と品質が担保されたイラストを簡単に作成できる。ノンデザイナーでも手軽に活用できるよう、そのまま使える600 通りほどのイラストも用意した。
開発期間は1 年足らず。2022 年2 月に一部事業で導入後、同年10 月から全社で展開が始まった。「開発時にはCRD の中で完結せず、各事業部のクリエイターたちと協働しながら進めていきました。実際にシステムを活用する人との共創プロセスが欠かせないと実感した経験が活かされています。以前は事業ごとにイラストの活用方法が異なっていましたが、汎用性が高く、持続的に成長できるシステムができました」(UXストラテジスト 河村征志さん)。
イラストの各種パーツの制作過程においては、数百人単位で楽天グループ内の利用者アンケート調査を実施。複数のイラストのパターンを見せながら「楽天らしい」イメージを模索していった。さらに楽天が重視するダイバーシティの考え方を反映するため、社内のダイバーシティ推進部署や障害者雇用に取り組むグループ会社と連携。妊娠中の女性や車いす利用者などを含む約30 人を撮影し、モデリングしてイラストの基盤をつくり上げた。これにより、性別や身体的特徴、人種、文化、宗教など、人々の多様な個性を表現できるように。その結果、国内はもちろん海外拠点からの利用も想定以上に増えている。
共創を生む、ボーンシステム
イラストの基盤を成すのは、人物を形づくる骨格などを定めるために開発した「ボーンシステム」だ。既成のパターンにはない新たなポーズが必要になった際は、このシステムをもとに各部門のデザイナーがカスタマイズし、アセット化することもできる。「関節可動フィギュアのように、システム内で新たなポーズを生み出すことができます。デザイナーのスキルやカルチャーを問わず、一定のクオリティで楽天らしいイラストを作成できるようになりました」(デザイナー 飯村卓也さん)。イラストの導入例は多岐にわたる。デザイナーの高林菜穂さんによると、パワーポイントなどを用いた研修用資料や各事業のキャンペーンサイトの挿絵、SNS の投稿用画像などへの活用が多い状況だ。
今後はモーション付きのイラストなど表現の幅を広げ、活用先を増やしていきたいと考えている。「多くのユーザーの方々に楽天経済圏やエコシステムの価値をより実感していただけるよう、CRD 発でそれらに寄与できるアセットを今後も提供していきたいです」(鍋嶋さん)。
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