あえてアプリのローンチとCMの公開時期をずらした理由
タクシーアプリ「GO」がローンチされたのは、2020年9月のことだ。遡ること5カ月、アプリ「JapanTaxi」を展開していたJapanTaxiと、DeNAのアプリ「MOV」などを担当する事業部が統合され、20年4月にMobility Technologies(MoT)へと商号を変更。タクシーアプリの深い知見を持つ両社が歩み寄って「GO」が立ち上げられた。
「GO」というサービス名には「行く、進む、向かう」といった意味のほかに、「タクシーに未来をのせて」という、同社の考えるタクシーの存在意義が反映されている。「SEOなどの観点から厳しいのでは、という意見もありましたが、目指す姿を体現した名称を優先しました」(Mobility Technologies GO 事業本部 本部長 江川絢也さん)という判断からも、新サービスへの覚悟と期待が感じられる。
大きな期待が寄せられていた一方で、課題も。「JapanTaxi」アプリや「MOV」のリニューアルではなく、別のアプリとして「GO」を立ち上げることになったため、一から認知を獲得していかなければならない状況だったのだ。
事業開始当初からパートナーとして携わるdofのクリエイティブディレクター 齋藤太郎さんは当時を振り返る。
「目標に掲げられた数字は相当大きなものでした。目標実現のため、マスを狙ってテレビCMを仕掛ける案が初めに出ました。でもCMで見て『いいな』と思った商品が、スーパーの店頭で見かけてようやく比較購買の対象になるように、GOのCMを流してもタクシーに乗りたいシーンでGOの姿が無ければ、せっかくの興味関心の受け入れ先が無いことになってしまいます。MoTの皆さんに『少しだけ我慢してください』と話し、先行してタクシーのラッピングを始めました。『CMで言っているGOとはこのことか』と受け入れ先を用意することで、実際のアプリの利用に繋がると考えたんです」。
そこで20年9月にアプリをローンチした直後の10月から、車体に大きくロゴを配したタクシー車両を都内を中心に3000~4000台ほど走らせた。
昭和な部長の「困った」を描く
街中に「GO」が走る状況をつくりつつ、テレビCMの企画も進めていった。企画の肝は、「困ったらGO」と印象付けることだったと齋藤さんは話す。「タクシーを使うのは、困った時なんですよね。だからさまざまな困ったシーンを挙げることで共感を得られるのではないかと。
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