今回は、3月6日に発売した新刊『わかる!使える!デザイン』(小杉幸一著)の「はじめに」を紹介します。
はじめに
ビジュアルデザインは、今を生きる人たちの共通言語
「デザイン」という言葉を聞くと、「センスが必要なのでは」とか「難しそう」と距離を取られる方も多いのではないでしょうか。また、自分が理解できていなくても、あとはデザイナーに任せればいいと考える方もいらっしゃると思います。
確かにグラフィックデザインやアートディレクションは、専門性の高い仕事であることに変わりはありません。なぜなら、単語を知らないと英語で文法を組み立てることができず、コミュニケーションが困難になるのと同じように、色やカタチの意味、フォントなどの性質を知らないことには、デザインができないからです。
しかし、これからの時代、デザインはもはやあらゆる場において特殊技能ではなく、コミュニケーションに必要不可欠な「共通言語」になると言っても過言ではなくなってきています。
はじめまして、アートディレクターの小杉幸一といいます。
そもそも「アートディレクターって何?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、まずは簡単に自己紹介をさせてもらいます。
僕はいわゆる美大である、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業し、広告会社の博報堂でデザイナー・アートディレクターとして16年間在職後、自身のデザイン活動の可能性をさらに広げるべく2018年に独立しました。
現在、株式会社onehappy(ワンハッピー)の代表をしています。広告を基本としながら、企業のロゴなどコーポレート・アイデンティティのデザインからブランディング、店舗の外装内装デザインやアーティストのジャケットデザイン、またテレビ番組の企画・アートディレクションや、公共物のデザイン、自主ブランドの開発、地方創生まで、さまざまなお仕事をさせていただいています。
この本を書いたきっかけの一つが、ここ数年、宣伝会議で「カラーマーケティング」の講座を担当したことです。その受講生の多くは経営者、広報、営業、事業部など、企業のさまざまな役職の方で、デザイナーはほとんどいません。
なぜ、そういう方たちが受講されているんだろう?と思い、お話を聞くと、「デザイナーから、青がいい!と提案されたけど、なぜそれがいいのか、社内で自分が説明できない」「自分の好き嫌いは言えるけど、マーケティング視点を持ってオリエンできない」「完成したデザインにどこか違和感があるけれど、それを言語化するのが難しい」といった課題や悩みを抱えている。それを克服して、デザインを使えるようになりたい!自分ごとにしたい!と思っている方が非常に多いのです。
また、最近よく聞く「デザイン思考」。あらゆるビジネスの現場で活用されているワードなので、みなさんも聞いたことがあると思いますが、その意味するところまではしっかりと理解されている、とは言い難い状況にあるのではないでしょうか。デザインの発想、考え方が具体的なアウトプットにどのようにつながっているか、そのプロセスはなかなかイメージしにくいところです。考え方の理解に加えて、プロセスや意味などを知ることで、的確な言語化やディレクションが可能になるのです。
こうした経験から、本書は美術やデザインを専門的に学んでいなくても、そしてデザイナーという職業でなくても、デザインとはどういうものであるかの理解を深めるとともに、ビジュアルコミュニケーションをきちんとディレクションできることを目的に執筆しました。
・どんな色で表現したらいいんだろう?
・そもそも色ってなんだろう?
・書体はいつも好き嫌いも含めて、なんとなく決めているけど大丈夫?
・写真を選ぶ視点って?
・レイアウトってどう考えたらいいの?
・自分の想いを乗せていいの?
・チームに共有ってどうしたらいいの?
・上司になんて伝えたらいいの?
などなど。
そんなデザインに対する「わからない…」を、「わかる!」「つかえる!!」にできることを目指しました。
わからない…というのは実はシンプルなことで、知らないだけなんです。
専門的な領域の部分まで踏み込まずとも、そうした知識や構造を理解するだけで、デザインへのイメージはもちろん、ディレクションする際の意識もガラッと変わると思います。
本書では「デザインは、今を生きる人たちの共通言語」と考えて、いくつかのメソッドをお伝えしていきます。
みなさんが抱えられているプロジェクトが少しでも円滑に進められるように、デザイナー視点からデザインに対する「意識」や「知識」、そして「気づき」をお届けできたらと思っています。
考えたことがブレずに仲間に、世の中に、ちゃんと伝わるように。
なにより、自分自身の決断に自信をもてるように。
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