※本記事は、『広報会議』7月号(6月1日発売)の転載記事です。
昨今、持続的な成長のために求められる「人的資本経営」。
従業員に投資することで企業価値を高める経営手法だが、この実現には制度の拡充に加え、従業員エンゲージメント(貢献意欲)を高める社内コミュニケーション施策も重要となる。
「人的資本」に関わるコミュニケーションを語る上で、まず「人的資本」の定義に立ち戻りたい。
国内において人的資本経営が注目されるきっかけになったといわれる「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書(通称、「人材版伊藤レポート」)」では、人が持つ能力やスキルを「人的資本」、すなわち「企業価値創造の源泉」と定めている。
技術革新に伴い、企業の「競争優位の源泉」やイノベーション、さらに持続的な価値向上の推進力が、人的資本をはじめとした「無形資産」に移行している昨今。
経営者、投資家、従業員などのステークホルダー間の相互理解を深めるために「人的資本の可視化」が不可欠となっている。
開示すべき19の項目
国際的な規定においては、2018年12月に「ISO 30414」が策定された。
日本でも、2022年8月に内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表。本指針では、「育成」「エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス/倫理」からなる計19項目についての開示を推奨している。(図1)。
企業と個人のパーパス一致を
では、「従業員エンゲージメント」を高めるとどのような好影響があるのか。
企業の進むべき方向性(パーパス、経営戦略など)に共感・熱狂する従業員が増えるため、業務に対する貢献意欲が高まり、事業の持続的な成長につながる。
つまり「企業のパーパスと個々の従業員のパーパスをいかに一致させるか」は企業価値向上の成否を分けるカギと言っても過言ではない。
その過程において社内コミュニケーションが果たすべき役割は非常に大きいのだ。
そこで、人的資本経営における社内コミュニケーションのポイントとして「取り除くべき3つの壁」と「構築すべき3つの仕組み」を以下に示す。
トップの言葉が伝わる場づくり
1つ目の壁は、制度・仕組みをつくる部門(経営企画部、人事部など)と情報を伝達する部門(広報部)という明確な「役割分担の壁」である。
人的資本経営においては企業理念、企業の存在意義(パーパス)などが重要なコミュニケーションテーマとなり、それらを従業員に深く・広く浸透させ、企業文化として定着させることが求められる。
そこで広報担当者に求められる役割のひとつに…
続きは、『広報会議』2023年7月号特集『社内コミュニケ―ション 従業員が参画したくなる伝え方~パーパス浸透・リスキリング・多様性、イノベーションを創出する組織へ~』でお読みいただけます。
このほか、ヤマハ発動機やロート製薬など、「人的資本経営」に関する社内コミュニケーションの先進事例や、広報業務における生成AIを活用法についても紹介しています。
ぜひご覧いただき、自社の社内コミュニケーション施策にお役立てください。
HRガバナンス・リーダーズ
ブランディング&コミュニケーションセンター長
広報PRコンサルタント
永田 正人(ながた・まさと)
武田薬品、フライシュマン・ヒラード・ジャパン、フリーランスPRコンサルタントなどを経て、企業のサステナビリティ経営を支援するHRガバナンス・リーダーズに2021年に入社。日本広報学会会員。
広報会議2023年7月号
【特集】
社内コミュニケーション
従業員が参画したくなる伝え方
GUIDE
人的資本経営における効果的な
社内コミュニケーションとは
永田 正人 HRガバナンス・リーダーズ
CASE1
ヤマハ発動機
リスキリング意識を高めるには
現場と協働し、成功事例の共有を
CASE2
ロート製薬
従業員巻き込んだ社内報の運用で、
“個”を活かす組織風土づくり
CASE3
freee
社内の「フラットな対話」促し
ジェンダーギャップのない理想像と現状の把握
CASE4
iCARE
重視する価値観を多角的に広め
従業員の行動への定着化目指す
COLUMN
ユニークな補助制度で健康管理
業界イメージへの変容へ
GUIDE
人材確保が難しい時代の
従業員エンゲージメントを高める3ステップ
中塚 敏明 スキルティ
COLUMN
社員数が4倍になっても風土が浸透する
人事・広報コミュケーション設計
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働く人同士の信頼構築を補う社内報
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akippa
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資産を活用し企業ブランド浸透を目指す
「オールTBS感謝祭」
TBSホールディングス
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「マインドをつなげて共感をつくる」存在に
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矢野健一
ほか