SNSでショート動画を効果的に活用する、企業の公式アカウントも増えてきています。
そこでコンテンツが飽和する中でも、多くの人の関心を集め期待する行動につなげる発想法について、ウェブCMの“バズる”ロジックに詳しいセカイ監督氏に聞きました。
※本記事は、『広報会議』8月号(6月30日発売予定)「“知られていない、伝わらない”を解決 SNS広報」特集 の転載記事です。
インタビュー
セカイ監督 氏/CMプランナー
せかい・かんとく 「つい最後まで見てしまう広告づくり」をモットーに活動。制作した映像広告の累計再生数は5000万回以上。広告ではなくSNS畑出身と、CMプランナーとしては珍しい経歴を持つ。
―制作実績の一例
シニア世代演じる“学園ラブコメ”
広告なしで総再生1200万回を突破
新潟県の冷菓メーカー・セイヒョーの動画「なぜか最後まで見てしまうアイス屋さんのCM」。2022年11月にTwitter、YouTubeで公開すると、瞬く間に拡散。ECサイトの注文件数が公開1日で前年同月の1か月分を超えるなど、商品の売上にも貢献した。
① 再生数を高める肝は、タイトル設計。
そのジャンルでバズっている「定番の切り口」の踏襲を。
② 最後まで観させる企画は、「既視感×新規性」の掛け合わせ。
視聴ハードル下げ、インパクト性も盛り込む。
③ 拡散性を高めるには、ツッコみたくなる「余白」を残すこと。
視聴者のツッコミで完結する内容を。
多くのショート動画が溢れるSNS。視聴者の興味を惹き、動画を最後まで観てもらうのも容易ではない。そうした環境で“バズる”動画を生み出すには、「まず『視聴者が思わず観てしまうタイトル』を設計する」のが重要だと、セカイ監督氏。
タイトルは「定番」を踏襲
タイトル設計で欠かせないのが、自分が投稿したいジャンルで再生数が高い「定番の切り口」を踏襲すること。
例えば「TikTokでブランド認知が得たい」場合、TikTokで人気の同ジャンルのアカウントを探し、特に再生数が高い切り口を真似してみる。ここで意識すべきは、再生数が取れる定番の切り口を「そのまま使う」ことだ。あえてオリジナリティを出さずに踏襲することで、自社の企業やブランドに興味のない視聴者も取り込むことができるのだ。
ただ狙ったジャンルで、再生数が取れる「定番」が見つからない場合、切り口を俯瞰的して設計し直すこともあるという。一例としてセイヒョーのアイスCM(『制作実績の一例』参照)の企画では、「アイスのCM」でここ数年“バズった”動画が少ないと分かった。そこで「なぜか最後まで見てしまう」など、YouTube全体で再生数が高い切り口からタイトルを設計したことが “バズ”につながったという。
またタイトルは、「動画を観た視聴者が感じること」を第三者の視点で付けるのもポイントだ。数多ある動画の中で視聴者が興味を惹かれるのは、自身が期待する感想を抱けるもの。このニーズから逆算することが再生数を高めるのだ。
「SNSごとに異なるタイトルを設定することも重要です。TikTokやTwitter、YouTubeなどSNSの特性によって再生数を取れる切り口は異なるため、特性に合わせて見せ方を変えるだけで再生数が格段に高まるケースも多いのです」。
「既視感×新規性」の掛け合わせ
タイトル設計に次いで重要なのが、動画を最後まで観てもらう工夫だ。ここで必要なのは、なぜか最後まで観てしまう「面白さ」だという。
「SNSウケする面白さとは、『既視感(あるあるネタ)』と『新規性』の組み合わせで生まれます。次の展開が分かる『既視感』は、視聴ハードルを下げ共感を生み出すフックに。ここに『観たことがない』新しさを加えると、『なぜか最後まで観てしまう』吸引力が高まります」。アイスのCMでは、若年層を中心に既視感がある「学園モノあるある」に、「シニア世代が演じる」という新規性が加えている。
だが、その組み合わせを見つけ出すのも難しい。この発想法についてセカイ監督氏は、「最も伝えたいキーワード」の類語とその対義語のセットを複数考え、紙に書き出すことを提案。複数の中で最も「意外性のある」組み合わせを企画の根幹にすることで、SNSウケする「面白さ」が生まれるのだ。
ツッコめる「余白」残す
さらに「視聴者が拡散したくなる」仕掛けについては、「ボケを放り投げること」だとセカイ監督氏。
「ネットで拡散されるのは、綺麗にまとまった内容よりも『ツッコミどころが満載』のもの。明らかに面白い設定なのに演者は大真面目といった、誰が見てもツッコみたくなる『余白』をあえて残すと、視聴者がツッコみたくなる=コメントして拡散する人が増えるのです」。アイスのCMでも、「学園モノあるある」にしては強引すぎる顎クイなど、「ツッコミ待ち」要素を多数入れ込んだ。
この仕掛けのため、セカイ監督氏は「動画を観た人がつぶやきたくなるコメント」から逆算して、企画を設計しているという。
「誰でもが気軽にコメントしたくなる内容の方が拡散されるため、想定できるコメントが複数浮かぶ状態になってはじめて、動画の制作をスタートしています」(セカイ監督氏)。
このほか、『広報会議』2023年8月号の「“知られていない、伝わらない”を解決 SNS広報」特集 では、ショート動画の撮影のポイントや、公式アカウントを運用するにあたっての基本、人気投稿ケーススタディなどを紹介しています。
ぜひご覧いただき、自社の社内コミュニケーション施策にお役立てください。
広報会議2023年8月号
【特集】
“知られていない、伝わらない”を解決 SNS広報
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